自由と正義

弁護士には、毎月『自由と正義』という雑誌が

日弁連(日本弁護士連合会)から届きます。

雑誌の中身は、法制度や弁護士業界の動き等に関する記事が多いのですが

弁護士の懲戒に関する公示がされるので

大半の弁護士はそれをよく読んでいることと思います。


弁護士が懲戒に関する公示について気にするのには理由があります。

刑事犯罪や事件放置等、明らかな問題行為はともかく

依頼者のために頑張りすぎて限界を超えたとか

どっちの行いをしてもグレーと言わざるを得ない二律背反状況での行い等

線引きの難しい行為について懲戒になることもあるからです。


弁護士の懲戒は「品位を失うべき非行があったかどうか」
という曖昧な基準で判断されるので

『自由と正義』に掲載される具体的な事例をみながら

自分なりに基準をつかむしかないのです。


”人を処罰するときは法律と刑罰を予め定めなければならない”
という原則を「罪刑法定主義」と言います。

要は、「悪いことをした者は適宜処罰する」

というおおまかな法律だけ作って

具体的に、何が悪いことか?どのような刑を科するか?は

裁判官の裁量次第、というようなことは許されないという原則です。


しかし、弁護士の懲戒制度は

何が悪いことか?を事前に明らかにしていません。

明確な基準がないなかで

「品位を失うべき非行があった」
と判断されてしまえば、懲戒となってしまいます。


さらに弁護士の懲戒制度で困ったものだと思うのは

”業務停止”という制度です。

懲戒処分の大半は”戒告””業務停止”です。

なかでも”業務停止”になると

現在依頼を受けている事件もすべて辞めなければなりません。


つまり、たまたま懲戒になった弁護士に依頼していた依頼者は

自分に関係ない理由でいきなり事件を放り出されるわけです。


懲戒になった弁護士が不利益を被るのはともかく

懲戒とは何の関係もない依頼者が面倒を被るという

無責任で内向きな制度だと思います。


他の業界であれば”業務停止”の処分が下されても

”新規○○業務の停止”等、業務停止の内容を限定し

既存顧客に影響が出ないようにするでしょう。

しかし弁護士はそうはいかないのです。


弁護士の懲戒制度も、”除名””退会命令”等の強度の場合はともかく

頻繁に行われる”業務停止”については

既存の依頼者に迷惑をかけない制度にすべきだと思いますが

今のところ変化はないようです。


いずれにしろ、万が一にも依頼者に迷惑を掛けないよう

当事務所では内部規律の向上を心がけています。

Comments are closed.