音楽の4つ目の要素

よく音楽の3要素として、メロディーと、リズムとハーモニーと言ったりします。
でも、本当は4つ目の要素があります。
西洋音楽は、4つ目の要素を切り捨てて、3つにすることで完成度を高めましたが、それによって失われたものがあります。
4つ目の要素は、音の面白さです。
音の面白さとは、変な音やきれいな音、すごい音、びっくりするような音を含む、音そのものが人の気持ちに訴えかける要素です。
たとえば、能管は調子っぱずれの独特の音を出し、尺八は、スワーとかシューとか入る変な音が大事です。
ガムランはハモらないことで生まれるウワーンウワーンといううなりを楽しみます。
銅鑼なんていうのも、基本的には、びっくりという面白さでしょう。
以前、中国で手に入れた横笛は、手で押さえる穴と吹き口の間に、余分な穴があって、
そこに竹のうす側を張って、変な音がでるようになっていました。

という具合に、西洋音楽と別の領域では、音の面白さは、メロディーなんかより大事なことは多いのです。
ただ、変な音、面白い音は、音程の不安定さと裏表ですので、ハーモニーを重視すると、切り捨てざるを得ません。
それで、ハーモニーを重視するクラシック音楽の中では、楽器は音程の安定と引き換えに、音の面白さを捨てていきました。

さて、音の面白さが残るのは、民族音楽だけではありません。
クラッシック音楽以外では、広い意味でのポップス音楽でも、音楽の4つ目の要素は当然、健在です。

ポップス音楽が人気で、クラッシック音楽は一部のマニア以外には退屈極まりないのも、音の面白さの有無が理由だと思います。
人気のポップス音楽からメロディーとリズムとハーモニーだけ取り出して、シンセサイザーに演奏させても、たいていの場合2割程度の魅力しかなくなります。
歌詞がないことはあまり重要ではありません。意味不明で聞いている洋楽だって同じことです。
聞いている人が愛しているのは、特定の歌手の声のトーンや、息遣いの面白さだったりするのです。
ポップスの歌手において、音程が完璧であることよりも、声や歌い方が魅力的であることのほうが大切です。

エレキギターという、決して美しい音ではない楽器が20世紀に地位を確立したのも同じ理由だと思います。
エレキギターは、ゆるい弦が生み出す、独特の音程の自由さや、エフェクター類の利用でひずんだ音等、おもしろい音を出す能力が秀でています。
その結果、現在でも、他の楽器が、音の魅力では7掛けだけどまあ気にならないということでシンセサイザーで代替されてしまうことが多い中で、エレキギターだけは人の手で演奏されます。

そんなわけで、ケーナという不器用な楽器とさんざん悪戦苦闘し、
その後、邦楽洋楽クラシック民族音楽と雑種に色々聞いている中での音楽の印象です。

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