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弁護士の就職難は続く

金曜日, 12月 21st, 2012
昨年は、就職できない人が400人ということでしたが
今年は、540人のようです。

まあ、弁護士の2割以上が年間所得70万以下なって言っていて
明らかに、弁護士の供給は飽和しているわけですから、
逆に、新人が1000人以上就職できていることを祝福すべきでしょう。

いずれにしろ、人数の問題は、市場が解決すべき問題であって、
何人とか決める問題ではない。
ただ、国家予算等の関係で言えば、入り口でもう少し絞るという
選択肢もあるかなとは、思います。

本当の問題は、試験の質です。
質が保たれているのであれば、資格試験である以上、
人数を決めるべきでないというのが正論です。

でも・・・・・。

まあ、確かに、法曹人口を拡大するんですから、
志望者が合格者数にあわせて増大しない限り
ある程度質が落ちることは、当然予測されます。

が、私の印象は、ちょっと違います。

当事務所では、弁護士の採用にあたっては、
法律の基礎知識の試験を行っています。

少なくとも、この知識がないと、弁護士向けのマニュアル類を
使うことはできないという基礎知識です。
常識として、そんなことわざわざ書かない基礎知識。
つまり、このレベルの知識がないと、
弁護士業界のインフラを使って、業務を行うことができない。

ところが、できる人は少ない。
別にできない人が悪いんじゃないんです。

明らかにカリキュラムがずれている。
試験内容が実務上必須の基礎知識が身につくように設計されていない。

確かに旧司法試験時代も、無駄なことをさせられました。
刑法でのなんとか無価値だとか
実務ではほとんど役に立たず
哲学を勉強した身からすれば、議論のレベルも極めて稚拙で
知的好奇心の対象にもならない、わけのわからないもの。
まあ、その手のものは沢山ありました。

そういう反省に基づいて、
無駄な知識を省いて実務的な知識を集中的に身につけるのが
新制度かと思っていたのですが、どうもそうではないらしい。

まあ、正直、多くの弁護士自身が、自分の仕事のエッセンスになっている
基礎知識が何であるのか、自省もなく業務を行っているので、実務上重要な知識という
ところで、応用知識か精神論ばかり教えることになる。

学者は、・・・
将来、法学者にお世話になることがあるかもしれませんので、あれですが
少なくとも、私の12年の弁護士生活において、法学者というものの存在感を感じたことは
これまでのところ、ほとんどありません(民法の我妻理論だけは別です)
実務に役に立つ本の大半は、弁護士か裁判官が書いた本だし。
つまり、実務的に何が役に立つかという興味を持っている法学者は、
かなり少数派だと思います。
法学者の社会的な存在意義は高いと思いますが、
実務教育に適した存在かというと、ピンときません。

 
考えてみれば、こんな状況では、実務で必須の基礎知識を身につけるという体制には
ならないのでしょう。
もっとも、5年10年単位では、新制度の人にとって使いやすいように、法曹界のインフラも
変わっていって落ち着くところに落ち着くのかな、とも思います。

ただ、弁護士向けのマニュアルを使いこなすだけの基礎知識がない状況で
即独(司法修習卒業後すぐ独立開業)というのは、
社会的に危険すぎるのではないか?
と、思います。