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因果関係

水曜日, 1月 16th, 2013
法律では,因果関係が問題になることがあります。
原因を生み出したのでなければ,責任を負わないから
というようなことです。

思わずゲラゲラ笑ったら,地球の裏側の人が気分が悪くなって病気になった。
という場合は,笑ったことと病気に因果関係がないとか
でも,気分が悪くなったのが目の前の人だったら,因果関係があるかも
ただ,気分が悪くなるまでは因果関係あるけど,病気まではないかも
とかそんなところです。

でも実際のところ,因果関係のなんたるかは,極めて形而上学的な話であって,
厳密に考えると訳が分からなくなります。

因果関係は,「あれなくばこれなし」なんて言ったりしますが,
因果関係が必然的であれば,世の中はすべて必然的に進んでいるのであって
「あれなくば」なんて世界は,空想上の全く妥当性のない仮定の話になります。

カントが言うように,因果関係は物の客観的な世界に存するのではなく,
人間の認識方式の一つに過ぎないと考える
(人間がすべてのものに因果関係があると考えて認識するから,すべてのものに因果関係があるとうこと)
と,因果関係認識の前提となる人間の記憶にある過去の世界は,「あれなくば」なんてことのない
一本筋の過去なわけだから,そういう意味でも,「あれなくば」なんて言うことは因果関係の前提を
壊すことになる。
つまり,「あれなくばこれなし」なんて言う考えは,そもそも言語矛盾なわけです。

でも,そんな言語矛盾な概念を用いて世界を認識せざるを得ないのが,
ある意味,人間の業(ごう)というものなのかもしれません。

というところで,因果関係という概念は真面目に考えては,いけないんです。
でも,法律では,どうしても因果関係概念が必要になる。
そんなあたりで,法律ではどうやって因果関係を考えるのか?
結局,社会通念上の因果関係なんてあたりで,落ち着いているようです。
つまり,多くの人にとって因果関係があるように思えるということです。

いい加減なもんですが,因果関係という概念は,こういう取り扱いをせざるを得ないのです。