「B型肝炎ウイルスキャリアですが,通院はしていません。でも,健康診断を受けているので(症状は無いので)大丈夫です」という方に言いたいこと。(後編)

前回の続きです。

健康診断を受けているから・症状が無いから,という方へ

前回書いたように,HBe抗原陰性の非活動性キャリア(すなわち症状が無い方)に,突然肝がんが発生するという事もあります。

確かに,症状が無い方と,慢性肝炎の方と,肝硬変の方を比べたら,肝硬変の方が最も肝がんの発生リスクは高いです。

しかし,実際には,肝硬変症に至る前に肝がんを発生する例は少なからずあり,特にB型肝炎ウイルスの場合には,正常に近い肝臓から肝がんが発生する場合もあり注意が必要とされています(参考文献2)。

実際に,私のお客様でも,肝硬変と診断されたことがない肝がんの患者さんが多くいらっしゃいます。
健康診断では,そのような肝がんが早期に発見されるとは,限らないのではないでしょうか。

また,症状がないから,という言葉には,とても心配にさせられます。
有名な言葉ですが,肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ,少々不具合が有っても症状が現れません。
症状があったら…たぶんそれは,慢性肝炎や軽度の肝硬変や,初期の肝がんでは無いような予感がしませんでしょうか。

専門医に通うと何をしてもらえるのか

血液検査(健康診断とは内容が一部異なります)に加え,肝がんの早期発見のため,腹部超音波検査を主体として,腫瘍マーカー測定や,場合によってはCT,MRI検査も行われることになると思われます(参考文献3)。
その結果として治療は不要だと判断されれば,特には薬が出ることも無いかと思います。

慢性肝炎の治療が必要と判断されると,多くは核酸アナログ製剤(特にエンテカビル)が投与されることになるかと思いますが,場合によりペグインターフェロンが用いられたリ,またそれらが併用されることもあります(参考文献2,4)。

なお治療が必要な場合には,治療費の助成についての案内が有ると思いますので,必ず申請をするようにして下さい。

いずれにしても,専門医が行う検査は,目的も,検査内容も,健康診断と違いそうなことをわかって頂けるとよいなと思います。

最後に

あまり怖いことを言うのも嫌ですし,実際多くの方は,何の症状が出ることも無く健康に過ごされています。
しかし,毎回毎回ちょっとうるさく言う事で,一人でも多くの方の肝がんを防げれば,言った甲斐があったなと思うのです。

ですので,私たちは症状が無い方の相談ももちろん受けます。でも,特に私に相談される方は,ちゃんと専門医療機関へ通院するようにして下さい。相談の際も,私は絶対これを言いますので。

もちろん私は,治療中の方からも,いろいろ治療のお話しを聞かせて頂くのが好きなので,お気軽にご相談いただきたいと思います。宜しくお願いします。



参考文献
1)沖田極・幕内雅敏編.2009.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝がん」医薬ジャーナル社.
2)熊田博光編.2012.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝炎ウイルス―B型・C型」医薬ジャーナル社.
3)日本肝臓学会編.2013.「肝癌診療ガイドライン 2013年版」<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp>(2016/4/5アクセス)
4)日本肝臓学会編.2015.「B型肝炎治療ガイドライン(第2.1版)」
<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b>(2016/4/5アクセス)

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