民法899条 共同相続人の遺産承継

相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法899条

各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
と規定しています。


”相続分”とは、相続人が妻と子2人の場合

妻が2分の1、子はそれぞれ4分の1ずつ、

などという、相続権の割合のことです。


遺産が不動産の場合、前回記載したとおりに共有になりますが

その共有の割合が相続分によりますというのがこの規定です。

ところが銀行預金については

お金をを請求できる権利(法律用語では”金銭債権”)なので、

民法427条という条文があり、何もせずに分割されてしまいます。

つまり、前回記載したように”共有物分割””遺産分割”をせずに

相続発生とともに、相続分どおりに分割されます。


具体的には、1,000万円の預金があって

2分の1の相続分を有する妻は

遺産分割をしなくても

500万円の預金が自分のものになり引出手続ができることになります。

じゃあ銀行に行って

「亡くなった夫の預金500万円をおろします!」
と言ったら銀行が応じてくれるのか?

それはできません。

「他の相続人の実印を当行所定の用紙に押していただき、
印鑑証明を用意してください」
と言われてしまいます。


一体どういうことでしょうか?


法律上は、銀行は妻の要求に応じるべきなのです。

しかし銀行としては

遺言書があるかも分からないし、

別の割合で遺産分割協議が成立しているかも知れないし・・・

ということで

トラブルに巻き込まれたくないがために

「他の相続人の印を・・・」
というのです。


ですから、トラブルが予想されないことを説明すれば

引き出しに応じてくれる可能性もあります。


銀行が引き出しに応じない場合、

銀行に対して預金を下ろせという裁判を起こす方法もあります。

「銀行はお金を払いなさい」
という勝訴判決がもらえ

その判決をもらえば、銀行は払ってきます。

銀行としては、判決が出たらから払わざるを得なかったという形がとれれば

トラブルに巻き込まれにくくなるからです。


実際は、銀行の都合だけでなく相続人としても

銀行預金は遺産分割の話し合いに加えた方が望ましいことが多いです。

というのは不動産は処分して換価しにくいことが多いので

細かく分けることができる預貯金が

遺産分割を皆さんの納得いく形にする調整役になるからです。


でも、たとえば相続人の一人が行方不明だったり

認知症で判断力を喪失している場合、

相続人が妻と子で子が未成年の場合は

遺産分割をするために

不在者財産管理人や、成年後見人特別代理人
の選任を裁判所に求める必要があります。


このように遺産分割をするために

色々面倒だったり余分な費用がかかる事案の場合で

相続財産が銀行預金だけの場合であれば

敢えて遺産分割をせずに、銀行に直接請求をしたほうが早道の場合もあります。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

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