「B型肝炎ウイルスキャリアですが,通院はしていません。でも,健康診断を受けているので(症状は無いので)大丈夫です」という方に言いたいこと。(前編)

B型肝炎訴訟については,どの弁護士よりも掘り下げて考えたい柏木です。
表題のセリフは,症状のない方(無症候キャリアの方)と相談をすると,かなり高い確率で言われるものです。

弁護士の多くは,特に何も言わないかもしれませんし,中には症状が無いと報酬も低いので,依頼を断る人もいるなどと聞きますが,私が言いたい事はちょっと違います。
表題のセリフは,間違っていると思います。 
「肝疾患の専門医療機関に通院して,お医者様の指示に従って下さい。 (そしてそれから,給付金のことが気になったら私に聞いてください)」 
これが私が言いたいことなのですが,せっかくなので,もう少し説明をします。 
なお専門医療機関については,こちら等で,各都道府県毎の「肝疾患専門医療機関」をお調べ下さい。
肝炎情報センター
http://www.kanen.ncgm.go.jp/index.html
 
何のために通院するのか 
究極的には,肝がん(肝細胞がん)になるのを防ぐ,又は早期に発見することが目的だと思われます。
というのも,肝がんは大抵その発生原因が明らかであると言われており,その90%はC型肝炎ウイルスかB型肝炎ウイルスの持続感染が原因であると言われています(参考文献1)。

また,B型肝硬変からは年率1.2~8.1%で,慢性肝炎からは0.5~0.8%で,HBe抗原陰性の非活動性キャリアからは0.1~0.4%で肝がんが発生すると言われています(参考文献2)。

これをどうみるかは人それぞれかもしれませんが,間違いないのは,B型肝炎ウイルスキャリアの方は,それだけで肝がんになるリスクが高い集団に属しているという事なのです。 
(後編に続きます)

 
参考文献
1)沖田極・幕内雅敏編.2009.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝がん」医薬ジャーナル社.
2)熊田博光編.2012.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝炎ウイルス―B型・C型」医薬ジャーナル社.
3)日本肝臓学会編.2013.「肝癌診療ガイドライン 2013年版」<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp>(2016/4/5アクセス)
4)日本肝臓学会編.2015.「B型肝炎治療ガイドライン(第2.1版)」
<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b>(2016/4/5アクセス)

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