FTX破綻か?

11月 11th, 2022

世界的に大手のFTXという仮想通貨取引所が大変なことになっていて、破綻の可能性が取り沙汰されています。FTX騒動のまとめという記事



日本でも日本版FTXの口座を持っている人が少なからずいると思います。
というのは、ブロックチェーンを利用する上で重要なsolanaという仮想通貨を日本の国内取引所で扱っているのは少し前までliquidという国内取引所だけで、これがFTXの傘下になり事実上FTXの口座に移管されたからです。
少し前まではsolanaを利用しようと思うと、日本の取引所以外に海外のバイナンス等に口座を作った上で、日本の取引所でxrp等の送金に適した仮想通貨を購入し、これをバイナンスに送金しそこでsolanaに換金するしかありませんでした。その後、liquidがsolanaを扱い出したおかけで、日本円で直接solanaえを購入できるようになったという経緯です。



被害を出さないために色々となされてきた国内取引所の規制がうまく機能するかどうかが試されていると思います。



また、solanaの金額も、FTXとの関係が強いということで、暴落しています。今後どうなるかはわかりません。
とはいえ、やはりイーサリアムに比べると圧倒的にガス代が安い。送金等もほとんど気にならない額で行うことができる。というメリットがあります。
さらに最近になってEVM互換になるということです。記事



これはsolanaでイーサリアム上で作られた様々なものが利用できるということになるので、おそらくsolanaの最大のデメリットが解消されたのではないかと思います。
たとえば、日本でブロックチェーンの勉強をしようと思うと、イーサリアムで動くsolidityというプログラムの本は沢山あって色々勉強できます。でも、実際にイーサリアムを動かそうと思うと、動かすコストが高すぎてやる気が起きません。
逆にコストが安いsolanaを試そうと思っても、solanaで動くプログラムの本はほとんどありません。



ところが、solanaでsolidityが使えるとなると、安いコストでプログラムを試してみることができるようになります。
そんな感じでブロックチェーンプログラムの普及が促進されるのではないかと思います。

岸田首相 Web3サービス利用拡大に言及

10月 7th, 2022

岸田首相が、所信表明演説でweb3サービス利用拡大に言及したとのことです。



さてどうなるか、楽しみなところです。
ブロックチェーン関係についての態度については、中国のように拒否する方向もあれば、米国のように比較的緩やかな方向もあり、国によって色々です。
私は、Web3の方向はとても面白いと思うので日本が推進方向に行くことはうれしい限りです。



ただ、実際うまくいくかというと、なかなか難しいだろうと思っています。



金融庁は不適切では?



まず、推進するのであれば、暗号資産取引所の金融庁の所管を取り上げる必要があるのでは、と思います。
金融庁が暗号資産取引所を管理する限り、暗号資産を投資商品としてとらえ、過度に投機的なものは消費者保護の観点から禁止すべき、という観点から離れるのは困難です。その結果、現状、Web3サービスを利用するのに不可欠なネイティブトークンの入手が困難な状況が生まれてしまっています。
日本人がWeb3サービスを容易に利用できるようにするためには、利用に必須のネイティブトークを容易に入手できるようにする必要があります。
暗号資産取引所が扱うべき資産を決めるにあたっては、投機的かどうかという金融商品を扱う視点ではなく、Web3サービスを利用するために便利かが重要です。この観点からすると、金融庁所管では適切な判断は困難と思われます。



ガラパゴス化の危険



また、今回のWeb3を拡大する意図としては、日本発のキャラクター等をNFT化することで世界的に収益機会を求めるようなことがあるようです。
ただ、正直、日本の現状では、そのようなストーリーはイメージが湧きにくいです。日本の既存のIT企業がプライベートなネットワーク上で日本人相手にNFTを販売するというのが関の山で、そこから世界へ拡大する道はほとんど開かれてはいなさそうです。
仮に日本初のNFTアートを世界へ、というのであれば世界中の人が使うプラットフォームでNFTアートを販売する必要がある。ところが、日本人はネイティブトークンの入手が困難で、そのプラットフォームを利用できないから、日本人に売ることからスタートすることができず、いきなり海外市場を相手にする必要がある。そうなると、どうみても海外勢が有利。
日本の既存のIT企業としては、Web3の拡大は収益基盤を損なうことから、自らのWeb3事業の拡大にあわせた形で国内のWeb3事業が拡大することを望んでいて、政府への影響も強い。ただ、これに乗る限り、世界で戦える余地はなさそう。
なんて感じです。



自己責任特区へ



いずれにしろ、消費者保護とか権利者保護、とか保護がどうのといっていると駄目なのだろうと思います。
Web3的世界が一定段階が進んだときは、各国の国内法の適用はほとんど意味がなくなるだろうと思います。ある種の自己責任と、参加者の一定のモラルとルールによって成り立つ世界です。
中国等がブロックチェーンの世界に厳しい態度を取るのは、これが見えているからだろうと思います。この問題に対して中途半端な姿勢は難しいです。
なので、Web3の推進をするのであれば、ブロックチェーン関係の世界は自己責任特区として、国内法の適用は考えないというくらいの姿勢を示すことが肝要なのだろうと思います。

仮想通貨に対する強制執行

9月 21st, 2022

仮想通貨に対する強制執行には様々な問題があります。まずは、他のサイトや書籍等でも書かれていると思われる基本的な考えをまとめた上で、その先の問題について書こうと思います。



基本的な状況



仮想通貨の中でもビットコインに対する考察が基本となります。その上で、ビットコインは所有権の対象となる物でも、債権でもないということになります(何であるかについては諸説あります)。
仮想通貨の保存場所として、取引所に保管している場合と、個人的にウォレットで管理している場合に区別します。



取引所に保管している場合



債務者が取引所に仮想通貨を保管している場合は、証券会社に保管している株式や投資信託に対する強制執行と概ね同様であり、大きな問題はありません。
取引所自体が裁判所の手続きに不慣れなこと、多少は法的性質について議論する余地もあること、書式等がまだ洗練されておらず思わぬ漏れが生ずる可能性があること等の小さな問題はいくつか予測されます。



個人のウォレットで管理している場合



債務者が個人のウォレットで管理している場合、仮想通貨が物でも債権でもないという性質が全面に出てきます。物や債権を前提にした強制執行手続きを直接的に利用することが難しくなります。
秘密鍵を入手できていれば、執行官とともに試行錯誤しながら、最終的には強制執行を奏功させることは期待できます。しかし、秘密鍵が入手できない場合、とりうる方法はなく、強制執行は事実上不可能となります。



発展的検討



上記の議論からはずれた部分について検討します。



海外の取引所で仮想通貨を管理している場合



債務者がバイナンス等の海外の取引所で仮想通貨を管理している場合も、理論的には国内の取引所管理と同様ということになります。しかし、下記のとおり、現実的には強制執行は難しいものと思われます。
なお、海外の銀行口座等でも同様の問題はありますが、仮想通貨の外国取引所の利用は敷居が低いので、海外の銀行口座に比べると問題になりやすいと思われます。



第1関門 債権執行の国際的管轄



 債権執行の国際的裁判管轄については明確ではありません。なので、とりあえず日本の裁判所に申し立てをすることになります。
 しかし、裁判所が管轄を認めるかどうか、は何とも言えないです。
 仮に日本の裁判所が管轄を認めない場合は、海外取引所の本拠地で執行申してをすることになります。場合によっては、はじめから判決の取り直しが必要かもしれません。しかし、そこまでする価値がある事案はレアだと思われます。



第2関門 日本の裁判所の命令に従うかどうか



 日本の裁判所が差押命令を出したとして、それが海外取引所に届いたとします。しかし、海外取引所が、それに素直に応ずるとは限りません。
 海外取引所が差押命令に応じた場合、債権回収はうまくいったといえます。
 応じない場合、次の手段を取ることになりますが、見通しは難しいです。



第3関門 取立訴訟の国際的管轄



海外取引所が日本の裁判所の差押命令に応じない場合、海外取引所を相手に取立訴訟を提起するというのが日本法での流れになります。
この裁判の国際的管轄が認められるかどうかも、民事訴訟法の規定がインターネットでの仮想通貨取引を想定していないことや、国際的管轄合意の内容等により左右される可能性があることから、やや不透明です。
これも日本で管轄を認められない場合に、海外で裁判をする実益がある件はレアだといえます。



第4関門 海外取引所に対する執行の国際的管轄



取立訴訟に勝訴した場合、海外取引所の財産に対して強制執行ができます。しかし、この強制執行について日本の裁判所でできるかは、やはり不透明です。



第5関門 海外取引所に対する強制換価



日本の裁判所の強制執行命令に海外取引所が従わない場合、強制的に海外取引所の財産を換価できることになりますが、現実的に日本に財産を持っていない海外取引所に対して、どのような手段がとりうるのかというと悲観的な見通しになります。



ビットコイン以外の仮想通貨について



次に、ビットコイン以外の仮想通貨(及び仮想通貨的なもの)について検討します。
ビットコインについては、管理者が想定できないことから、債権ではないことになり法的問題が色々と発生しました。しかし、それ以外の仮想通貨についても、同様な議論が成り立つかというと、一概にそうとは言えません。
仮想通貨は、基本的にはブロックチェーン上の台帳記載に過ぎません。誰がいくら送金した、ということがが記載された台帳です。ビットコインについては、台帳の記載以外に何もないのですが、通常の債権債務の譲渡をブロックチェーン上に記載してもよいわけです。その場合は、ブロックチェーン上の記載は債権を表していることになります。



ステーブルコイン



ステーブルコインコインというものがあります。ドルや円等に連動した仮想通貨です。
様々なものがありますが、日本で解禁されるにあたっては、発行者の資格が制限され(つまり管理者が存在する)、いつでも円と交換できる形になりそうです。
となると、その仮想通貨は発行者に対する債権と考えることができそうです。ビットコインの議論が当てはまる可能性はないだろうと思います。



ユーティリティトークン・ガバンストークン



ユーティリティトークンとは、ゲーム等のサービス内で利用できる仮想通貨です。ステーブルコインのように金銭債権ではないですが、その通貨と引き換えにゲーム内での一定のサービスの提供を受けることができるわけですから、ゲーム提供者に対する債権と考えることができます。
ガバナンストークンは、何らかの組織に対して一定の地位があることを示す仮想通貨です。意見表面の権利があったり、方針決定の多数決に参加できる等、株式的なものといえます。
ユーティリティトークやガバナンストークンの中には、市場で取引され価格がついているものもあります。
強制執行を考える上で、金銭債権ほど容易ではないですが、ビットコインの議論が当てはまる可能性は少ないだろうと思います。強いて言えば、ゲームの提供者や、組織の運営が完全に分散化されて、提供者が想定できない状況になった場合に、ビットコインの議論が当てはまる可能性があります。



プルーフオブオーソリティのネイティブトークン



誰でも利用できるパブリック・ブロックチェーンにもいくつか種類があります。ビットコインは、プルーフオブワークといって、ブロックチェーンを構成するコンピュータ(ノード)に誰でも参加できます。なので、全ノードを管理する誰かを想定することは困難です。
ところが、プルーフオブオーソリティという方式もあります。この場合、ブロックチェーンを構成するコンピュータに誰でも参加できるわけではなく、特定の企業や組織が管理するコンピュータのみが参加できる形になります。バイナンス・スマートチェーンが一例です。ブロックチェーンを構成するコンピュータを管理するものとして、バイナンス社を想定することができます。
バイナンス・スマートチェーンを利用するのに必要なネイティブトークンがBNBです。ブロックチェーンの提供者であるバイナンス社に対して、利用を請求する権利を示すと考える余地があります。
この場合も、ビットコインとはだいぶ異なり、債権と考える余地があります。



プルーフオブステーク・プルーフオブワークのネイティブトークン



パブリック・ブロックチェーンのうち、プルーフオブステークやプルーフオブワークの場合、ブロックチェーンを構成するコンピュータ(ノード)に誰でも参加できます。ただ、イーサリアムやソラナ等はいまだ様々なアップデートを行ったりしています。つまり、ブロックチェーン全体の方向性を仕切る集団がいるということです。
その集団に全権があるわけではなく、ある種のアップデートについて意見が分かれる場合は、ハード・フォークといってブロックチェーン自体が分岐していしまいます。最近も、イーサリアムがプルーフオブワークからプルーフオブステークに移行するにあたって、反対派が分岐しています。
とはいえ、ビットコインのように完全に管理者特定不能というわけではなく、一定の管理者が想定できるといえます。
そうなると、イーサリアムにおけるETHのようなネイティブトークンは、イーサリアムというブロックチェーンの利用料として想定されているので、イーサリアムの管理者に対する債権と考える余地もあります。



小括



このように、ビットコインについてなされている議論が、他の仮想通貨についても通用するかというと一概にそうとは言い切れません。かといって、ビットコインだけが特別であって、ビットコイン以外はすべて債権というのも難しいのではないかと思います。ビットコインも、初期はサトシ・ナカモトのグループが色々と仕切っていたようですので、徐々に分散化していくイメージがあるといえます。
もっとも、仮に債権と言える余地があるとしても、たいていその債務者(執行における第三債務者)は、海外の組織であり、債権の準拠法も日本法以外ということになり、現実的に執行するのは海外の取引所に対する執行よりもハードルは高そうです。
とはいえ、管理・提供組織が国内組織の場合だったり、額が非常に大きい場合等では、その仮想通貨がは債権と言える余地がないかは検討に値するのではないかと思います。



動産執行で、秘密鍵・パスフレーズを探すべし



最後に少し毛色の違う補足です。債務者が、仮想通貨を、取引所ではなく自らウォレットで管理している場合、秘密鍵がわからない限り強制執行は困難とされます。
逆に言えば、秘密鍵を入手できれば強制執行の余地がでてきます。
また、通常のウォレットでは秘密鍵では管理が困難なため(意味不明で長い文字列)、パスフレーズという12語または24語の英単語を利用することが多です。
いずれも、通常のパスワードのようにメモ帳やパスワード管理ソフトに簡単にメモしておくには、少し長いです。そのため、印刷してどこかに保存してある可能性があります。
なので、動産執行によって自宅を探す場合に、秘密鍵やパスフレーズを発見できる可能性は、通常のパスワードよりは高いのではないかと思います。
PC内のファイルとしてメモしていている可能性もあります。もし合法的にPCの中をみることができるのであれば、探してみる価値はあるといえます。
なお、秘密鍵やパスフレーズの保存先として、PC内がよいか、紙で印刷が良いかは一長一短です。PCのウイルス感染の危険からすると、紙で印刷のほうが良いですが、家族等や動産執行で見られる危険からするとPC内のほうが安全です。

NFTの法的検討:クリエイター側視点で

9月 8th, 2022

NFTアートについては、2021年に大きく盛り上がりましたが現在は下火になっているようです。
NFTという方式がデジタルアートに適しているのかは、まだ不明です。ただ、今後、主流な方法になる可能性も十分あるので、それを見据えて検討します。



なお、NFTの法的性質論の前提として も参照ください。



NFT化自体には特殊な効果や意味はない



NFT化するというと、なにか特殊なデジタルな物や権利が発生するようにも思えます。また、メディアであたかもそのように宣伝しているようにみえます。しかし、現状を前提にする限り、そのようなものではないようです。
NFT化するということは、ブロックチェーン上にデジタルアートを登録するということです。
ブロックチェーンは分散型台帳です。NFT化するということは、特定のデジタルアートを台帳に記載するということです。自分の紙のノートやPCに、自分のアートの名前と番号と保存場所url、誰かに譲渡した場合はその相手を記載しておくのと本質的に変わりません。データの保存場所が、自分のPCと違い、
・管理者が分散化されていて特定しにくこと、
・誰でもみることができること、
という点が違うだけです。



なぜ、NFTが特殊なデジタル物や権利であるかのように説明されるのか



ブロックチェーンの大成功例がビットコインです。
ビットコインについても、基本的には送金のやりとりの台帳の記載に過ぎません。
ところが、多くの人がビットコインに価値を認めるに至って、通貨のような価値を持つようになりました。ブロックチェーン上に、特殊なデジタル財産としてのビットコインが生まれたのです。
これは、本来ただの紙切れにすぎない紙幣に、人々が価値を見出すようになったというのと似たような状況です。ブロックチェーン上の記載自体は紙切れに過ぎないといえます。



ただ、すべてのブロックチェーン上の仮想通貨がビットコインのように価値があるものと見ることができるわけではありません。現状、ブロックチェーン上で自分独自の通貨を発行するのは容易ですが、それにビットコインのように価値が発生する可能性は低いです。



NFTについても基本的には紙切れ同様の台帳の記載といえます。あとは、ビットコインのように人々価値を見出すかがです。
そのような中、NFTアートが爆発的な価値をつけ、高額の取引事例が沢山発生しました。となると、ビットコイン同様、なにか特殊な権利であるかのように扱える可能性があるということになります。
ただ、この状況が継続的に続くのかどうかはまだ不明です。



また、NFTにおいては、その発行元となるスマートコントラクトのアドレスが信用の基本となります。誰でもNFTの台帳に記入することできるので、コピー品のNFTの作成も容易だからです。
そこで、あるスマートコントラクトアドレスから発行されているNFTに価値があっても、他のスマートコントラクトから発行されているNFTは全く価値がないということになります。
これはビットコインと、無数の無価値の仮想通貨と同じ関係といえます。もっとも、仮想通貨と違ってNFTの場合は、個々のトークンに個性があるので、同じスマートコントラクトから発行されていても、同じ価値というわけではないという違いがあります。



本来、台帳の記載にすぎないNFTが特殊なデジタル物や権利であるかのように説明されるのは、ビットコインが成功していること、一部のNFTアートの成功によりNFTアートについてもビットコイン同様の成功の可能性があること、が理由といえます。



NFTと各国での著作権法との関係



WEB3.0とかメタバースとかいったことが実現した場合に、大きな影響があるのが各国の法規制です。どこでもない場所において様々な国の人々が集まって取引等をする場合に、特定の国の法律の適用が問題になるのかは興味深いです。
各国の法規制がないことによる不都合もあると思われますが、
・生命身体に対する危険はないこと、
・既存の各国の規制の大半は過去の遺物であって今現在適用することが合理的でなものも多いこと
から,むしろ積極的側面が多いかもと思います。



著作権法でいえば、現在の法規制はアナログ的な印刷録音技術が発達したある時代の状況を前提に成立したものと言えます。
それ以前は、そのような保護はなくても偉大な文学・音楽・絵画は沢山つくられたので、それがないと芸術が保護されないということはないです。
また、現在のデジタルな技術背景からすると、著作権法がどうにもならなくなっていることも明確です。ただ、著作権法による規制を前提にある種の職業が成立し様々な権益が成立している以上、各国において著作権法を抜本的に変えることは難しいのだろうと思います。
ですが、新たに成立したWEB3.0とかメタバース上においては、このようなしがらみのない新しいルールの適用をしたほうがよいのではないかと思います。Web3.0成立以前の権利を無理にWEB3.0上でも確保しようとするのではなく、WEB3.0上でよりクリエイターが活躍しやすいルールをつくったほうがよいのでは、ということです。



NFTの法的権利



NFTというのは台帳の記載にすぎない以上、NFTの法的権利という概念自体に違和感があるといえます。ただ、創った作品をNFT化して、誰かに譲渡した場合に、自分にどのような権利が残り、譲受人にどのような権利があるのかは重要なところです。
しかし、これも何ともいえないということです。もしある程度明確にしたいのであれば、自分でNFTをミントする際に、譲受人にはどのような権利があるのかを決めて伝えたり公示したりする。ということになると思われます。著名なNFTアートのCyptoPunksで





という記事があります。しかし、このように明確にしようとするのは現状では珍しいといえます。下手なことを書いて必要以上に権利を譲受人に与えてしまうリスクもあるので、明確にしたほうが良いとは必ずしもいえません。
譲受人に何の権利がいくのか明確にしていない場合は、日本法だと、一般的にNFTの取引ではどういう権利が移転するのか、とか、売った人や買った人はどういうつもりだったと想定するのが合理的か、を考えることになります。が、前述の通り、日本法解釈にどこまで意味があるのかは疑問です。



なお、日本での楽天やLINE等がやっているプライベート・チェーンでのNFTであれば、規約は当該会社が決めていると思われるので、その内容になるのだろうと思われます。



将来を見据えて何をしておくべきか



今、作り出したキャラクターが、将来、メタバース上で大人気になったとする。そのキャラクターを勝手に売り出して儲けている人もいる。
このような状況下で、キャラクターを創った人に一定の権利が認められるルールが成立する可能性があります。ただ、この場合、そのキャラクターを自分が創ったのだということを、どのように証明するのでしょうか?



現実世界での投稿された雑誌等を材料に判断するということはなさそうな気がします。このような場合に、NFT化しておくと、特定の日に特定のデジタルアートをミントしたということを証明しやすくなると思います。
そして、どのような形でNFT化されているかによって信用性は異なるので、



  • イーサリアムのようなできるだけメジャーなブロックチェーン上で、かつ、
  • できるだけメジャーな方法でNFT化しておくのがよいのではないかと思います


イーサリアムでのNFT化はコストもかかるので、沢山の画像データをNFT化する場合は、PolygonだったりSolanaだったりより安価にNFT化することも考えられます。ただ、10年後なりの将来から振り返ったときの信用性という点では、できるだけメジャーな方が良いので、費用対効果での判断になろうかと思います。
なお、ブロックチェーンの種類(法的問題の前提)も参照



また、NFT化するといっても、画像データ自体はブロックチェーン上のに登録されるわけではないので、画像データの改ざんが容易な場所に保存していると、後に差し替えたのではないかという疑念を払拭できなくなります。
そうなると、何らかのルールや判断の枠組みを作るときに、メジャーなブロックチェーン上でNFT化されていればそれでよいということにはならず、NFT化した場合の画像データの改ざんがないことについて一定の信頼がある方法でのNFT化されていることが肝要となることが予測されます。
できるだけ変更履歴が残り、変更履歴の改ざんも困難な方法で画像データの保管がされていることが重要です(IPFSであれば、これが実現できているのかは、まだ不勉強でよくかってません)。

暗号資産の所得税制改正について

8月 30th, 2022

暗号資産(仮想通貨)の所得税について、分離課税の方向で議論がされるそうです。
 金融庁の「貯蓄から投資」を促す姿勢鮮明に、暗号資産税改正等



基本的には業界団体の要望に沿った形のようです。
 暗号資産税制改正求め金融庁に要望所提出



法人課税については、大問題だったので改正方向はとてもよいと思います。
所得税の分離課税についても、そのほうがよいです。



ただ、所得税については、もっとすべき改正があると思います。現状だと、かたく考えた場合、ブロックチェーンベースのゲームなり、メタバース等を利用すると、ちょっとした操作をするたびに、細く複雑な暗号資産の帳簿をつけなければならないことになります。
まともにやるには煩雑過ぎますので、課税リスクを覚悟しながら適当にやるか、ブロックチェーンベースのゲームなりメタバースはやめておくか、ということになってしまいかねません。
つまり、日本人はWEB3.0はやめておけ、というような状況なわけです。



パブリック・ブロックチェーンベースのゲームなりをするには、何かをするたびに、ガス代等としてイーサリアム等が必要になります。そして、イーサリアムの値動きにあわせて、売却益なり売却損、その上での計算上の単価を出す必要があります。たとえば、

1ETHが20万円のときに、0.5ETHを10万円で購入します。
1ETHが30万円になったときん、ゲームアイテムを0.01ETHで購入します。手数料が0.005ETHかかりました。
このとき、0.015ETH分は20万円から30万円に値上がりした分の売却益が出ますので、1500円の売却益(これは課税される)ということになります。
さらに、1ETHが35万円のときに0.2ETHを購入してETHを補充します。
この場合、手持ちのETHの価額は、20万円の簿価の0.485ETHと、新たに35万円の0.2ETHを加重平均をとって
 (20万円✕0.485+35万円✕0.2)÷(0.485+0.2)というような計算をします。



こういうことを、やり続ける必要があるということです。



エクセルを使えばある程度できますが、そうまでして、ブロックチェーンゲームをしようとは、普通は思わないと思います。



私自身もブロックチェーンに興味をもって色々やりはじめたときは、相場があがり調子だったので、実験的に送金すしたり色々するたびに売却益が発生して税金も発生するような状況でした。でも、ある段階で暴落したので、一気に赤字になって、とりあえず実験段階ではたっぷりの赤字で、今年は税金は発生しなさそうです。私は勉強がてらなので色々帳簿つけもしましたが、まあ、まともにやる気のする作業ではありません。



業界団体なりが、この問題を認識しながら要望として後回しになっているようです。
結局のところ、業界団体も役所も、現状は、暗号資産を本当にWEB3.0的のエッセンス的なものととられているのではなく、投資・投機的手段として考えているに過ぎないといえます。
または、うがった見方をすれば、ブロックチェーンゲームやメタバースにしろ、日本人相手にした閉じたプライベートチェーン的なものを作りたい人を中心に、要望がなされているのではないかという気もします。ガラパゴス的Web3.0を目指す会といったところでしょうか。



さらに、値上がり益を目指すのではなく、定期的な収入を目指すという面ではステーキングがとても重要です。従来、ブロックチェーンはプルーフ・オブ・ワークに基づきマイニングによって支えられていました。しかし環境負荷が大きいことからプルーフ・オブ・ステークが主流になってきています。。これはステーキングといってお金を預けてブロックチェーンの基盤を支えることで、その対価として5%から15%程度の金利的な収入を得るというもので、少額から誰でも参加できます。
ところが、このステーキング、毎日金利が発生するのです。そのため毎日収入の帳簿付けが必要になります(収入だけでなく、仮想通貨の価格変動も毎日チェック)。有料での計算サービス()を利用しないととてもでないとやってられません。ただ、交換所を介さずにダイレクトにステーキングする(これが本来の姿)となると、こういうサービスも利用できないのではないかと思います。
果たして、税金の申告のためにこんな煩雑な事務作業をする必然性があるのが極めて疑問です。日本円に替えたときに所得発生とすれば済む問題ではないかという気がします。
これも、業界団体等を構成する日本の交換所の大半がステーキングサービスを提供していないことから、税制改正で要望されていないのではないかという気がします。



さらに、ブロックチェーン基盤でのWEB3.0のゲームとなれば、ゲーム内で稼いだ通貨が仮想通貨になってきます。昨年あたりから話題になっている。play to earnというものです。その場合、ゲーム内のお金のやりとりすべて帳簿をつけろ、というのが現在の税務上の要求ということです。もう、やってられません。



この問題が難しい理由はいくつでも挙げられると思いますが、WEB3.0が普及しつつある国では、そういう税制になっていないのでしょうから、日本の単にそうすればよいだけです。グローバル化した制度のなかで、そのような調整が必要なのは当たり前で、その気になればよいだけのことと思われます。



仮想通貨(暗号資産)の財産調査(財産分与等)

8月 22nd, 2022

離婚事件や相続事件等で、相手方の財産隠しが疑われる場合、弁護士会や裁判所等の手続きを通じて財産調査をしていくことになります。仮想通貨についても、同様の財産調査が必要になることが想定されますが、銀行預金や証券口座とは調査方法等が異なる部分があるので、そのあたりについて書きます。



仮想通貨の3つの保管場所



仮想通貨の保管場所としては、主に次の3つがあります。



  1. 国内の取引所
    bitFlyer、コインチェック、GMOコイン、DMM Bitcoin、FTX Japan、BITPOINT、LINE BITMAX等
  2. 海外の取引所
    Binance、Bybitl等
  3. ウォレットで管理


3つのそれぞれについて、保管場所の発見方法や口座残高の確認方法等が異なります。



仮想通貨特有の財産調査方法



仮想通貨特有の調査方法として、エクスプローラやスキャンという、ブロックチェーン上の取引を調査するサイトがあります。ブロックチェーン(パブリックチェーン)は、すべての取引履歴は公開されています。それゆえ、アドレスが特定できれば、その取引履歴、現在残高等を調査することができます。



いくつか例を書きます。各サイトごとに見やすさや入手できる情報が異なるようなので、目的とする通貨名+エクスプローラ、目的とする通貨名+スキャン で検索していくつか見てみることをおすすめします。





いくつかの補足事項です。



  • 記載されているのは、あくまでアドレスであり、本人の名前や送金先取引所名が書かれているわけではない。
  • 取引所のアドレスは、他の利用者との共通アドレスのことが多い。本人のアドレスA→取引所のアドレスBへ送金となっている場合。アドレスBの残高が本人の口座残高というわけではない。
  • 大量に取引がなされているアドレスは取引所等、個人のものでない可能性が高い。


仮想通貨:国内の取引所の財産調査



国内の取引所は、仮想通貨の3つの保管場所の中では、銀行預金や証券口座の調査に近いといえます。



仮想通貨:国内の取引所の発見方法



日本円と仮想通貨を交換できるメインルートは国内の取引所です。それゆえ、仮想通貨を保有している人は国内の取引所に口座を可能性が高いです。
国内の取引所の取引所への入出金は、銀行口座を介することが多いです。コンビニ入金等もできますが、手数料が高かったり大きな額の移動には適していないので、銀行口座の取引履歴の分析からの口座発見がまず第一となります。



また別のアドレスがわかっているときには、その送金先のアドレスをエクスプローラやスキャンで調査するとわかることもあります。例:イーサスキャンのComments欄のやりとりでbitflyerの口座らしいことがわかる



その他、メールの内容、2段階認証でのスマートフォンへのメッセージ等を把握できる場合は、そこから見つけることもできるかもしれません。



仮想通貨:国内の取引所への調査事項



国内の取引所は、それ以外の仮想通貨保存場所を探していく起点となります。そこで、その国内取引所での現在の仮想通貨残高だけでなく、その口座への仮想通貨の入出金状況の照会をすることも肝要となります。
入金元や出金先は基本的にはブロックチェーン上のアドレスになります。しかし、最近ではトラベルルールにより出金先の情報の登録を義務付けていることも多いと思われるので、仮想通貨の受取人情報等の取得を求めることが肝要となります。参考:bitflyerでのトラベルルール



というのは、アドレスがわかっても、それが本人の口座なのか、他人なのか、他の取引所なのかといったことの特定は困難になってしまうことが多いですが、受取人情報の記載があれば、その特定が容易になるからです。



仮想通貨:海外の取引所の財産調査



国内の取引所の利用のみだと、仮想通貨の様々な利用をすることが困難なので、Binance等の海外の取引所の口座も持っている場合が多いといえます。
銀行預金だと、日本に支店のない海外銀行の口座を開設することはあまりなく、海外銀行の財産調査は実務上あまり出てきません。しかし、仮想通貨の海外取引所はインターネットで簡単に口座が開設できるので、今後、実務的に問題になる可能性が高いといえます。



仮想通貨:海外取引所の発見方法



送付先のアドレスをもとに上記のエクスプローラやスキャンのサイトを調査すると、Binance等はアドレスにBinanceというタグのようなものがついていてわかることがあります。例:イーサスキャンでのバイナンスのマーク付アドレス
このアドレスは他の利用者との共通アドレスの可能性が高いです。エクスプローラやスキャンで利用履歴や現在残高を確認でき、残額が極めて高額だったり、利用が頻繁だったりすれば共通アドレスの可能性が高いです。
それゆえ、その取引所に口座がある可能性はわかっても残高まではわからない可能性が高いです。



クレジットカードで仮想通貨の購入をしている可能性があるので、カードの明細から判明する可能性もあります。



国内取引所から送金先として、自分の名前での海外取引所として登録されていれば、口座をもっている可能性が高いといえます。



その他、メールの内容、2段階認証でのスマートフォンへのメッセージ等を把握できる場合は、そこから見つけることもできるかもしれません。



仮想通貨:国内の取引所への調査事項



国内の取引所であれば、ある程度絞り込めた段階で、弁護士会経由での照会や裁判所からの調査嘱託によって調査可能ですが、海外取引所については、回答がなされるかどうかの見通しは不明です。



ウォレットで管理している仮想通貨の調査方法



ウォレットは、暗号資産を自ら管理する方法(ただし、取引所のアプリとしてのウォレットもある)で、chrome等のブラウザ、スマートフォンのアプリ、USBにさす形等が多いです。単に秘密鍵をメモしたものをペーパーウォレットと呼ぶこともあります。
基本的には、取引所等の第三者が関与していない場合について、ここで記載します。



仮想通貨:ウォレット管理アドレスの発見方法



国内取引所からの送金先アドレス、エクスプローラ等を利用しての他の本人アドレスからの送金先アドレスとして把握できることが多いです。
本人が使っているウォレットを操作することができれば、そのアドレスを見ることはできます。ウォレットに使っているソフトが判明しても、どこかに照会をしてアドレスを聞き出すということはできません(取引所ウォレットを除く)。



なお、ウォレットは一般的に、既にインストール済みのものを起動するにはパスワード、新たなところにインストールするには、シードフレーズという12語または24語の英単語を利用することが多いです。
相続事件等で、被相続人が暗号資産を管理していたことは分かっているが内容が不明のとき、シードフレーズが判明すれば、相続人全員の同意のもとウォレットを使えるようにでき、アドレス等も把握することができます。シードフレーズは、通常のパスワードと違い暗記は難しいですし、パスワード管理ソフト等にも入れにくいので、どこかにメモが残っている可能性が十分にあるといえます。



仮想通貨:ウォレットアドレスの調査



ウォレット管理暗号資産の特徴としては、本人だけが管理しているので第三者への照会という手法を利用できない反面、アドレスが判明すればエクスプローラやスキャンの利用によって、現在残高やすべての取引履歴を把握できるとうことです。ただし、本人の名前等は記載されていないので、当該アドレスを本人のものであることを、エクスプローラ等から特定することは通常できません。





その他仮想通貨調査事項の補足事項



JPYCの発見法法



JPYCという日本円ステーブルコインサービスがあります。
これは暗号資産ではなく前払式支払手段という位置づけとのことです。
ただ、JPYCを購入した上で、sushisuwapというDEX(分散型取引所)を利用すれば、JPYCと仮想通貨を交換できそうです。なので、国内取引所を経由せず、JPYC経由で日本円と仮想通貨を交換することもできそうです。
JPYCでは銀行振込がスタートのようなので、銀行口座の明細から探していくことになります。
その上で、日本国内の業者なので弁護士会経由または裁判所経由での調査をしてくことになろうかと思います。

仮想通貨(暗号資産)の相続手続

8月 16th, 2022

仮想通貨の保管方法としては、国内の取引所、海外の取引所、自らのウォレットでの管理の3通りがある。相続手続はそれぞれで大きく異なる。



国内の仮想通貨取引所での相続手続



bitFlyer、コインチェック、GMOコイン、DMM Bitcoin、FTX Japan、BITPOINT、LINE BITMAX等の国内の仮想通貨取引所での相続手続は、国内で銀行口座や証券口座を持っている場合と大きく異なることはなく、海外取引所やウォレット管理にに比べると容易である。



国内の取引所



その取引所に契約者が亡くなった旨の連絡をする。
取引所の指示に従って、戸籍謄本類や相続人が署名押印すべき書類を用意し提出する



という流れになる。



取引している取引所が不明な場合



亡くなった人のメールをみることができる状況であれば、メールに手かがりがある可能性が高い。
また、取引所への入出金は銀行口座から行うことが多いので、銀行口座の入出金履歴に手がかりがあることも多い。
仮想通貨の取引をしていたと思われるが、どの取引所と取引しているか不明な場合は、各取引所に個別に照会して確認する



生前の対策(仮想通貨の相続)



遺言書を作成する場合には、取引所の名前を明示する。遺言書を作成しない場合でも、どこの取引所と取引していたかを遺された人が把握しやすいようにしたおいたほうがよい。
なお、後述の通り、海外の取引所や自らのウォレットに仮想通貨がある場合、相続手続きが困難だったり、不可能になる可能性がある。万が一の可能性がある場合は、できる限り国内の取引所に保管したほうがよい。



海外の仮想通貨取引所での相続手続



バイナンス等の海外の仮想通貨取引所の口座開設の必要性



現状、国内の取引所では購入できる仮想通貨の種類やできることが著しく限られている。たとえば、
・ブロックチェーン上のゲーム等をする場合に必須のネイティブトークンが入手できない。
・ステーキングや流動性供給のような、仮想通貨の基盤を維持に協力することによってインカムゲインを得る手段がない
等という状況である(2022年8月現在)。
そこで、仮想通貨の値上がり益だけを期待するのであれば国内の取引所だけでよいが、より具体的な仮想通貨の有用性に踏み込んでいこうとすると海外の取引所で口座開設をせざるをえない実情がある。
海外の取引所での口座開設というと、よりハイリスクハイリターンな仮想通貨を購入して儲けることを期待してるように思えるが(そういう方も少なからずいるとはいえ)、実際にはむしろ逆と言える。



日本に支店のない海外の銀行に口座を開設することもできますが、そのような事案はレアであり、従来はあまり問題になりにくかった。
しかし、仮想通貨の海外取引所については、インターネットで簡単に口座の開設ができること、上記のように口座を作る必要性があることから、今後、大きく問題になると思われる。



日本法に基づいた手続は期待できない



日本法の枠内での相続手続は預金であれ不動産であれ何であれ、前記国内取引所で記載したように
・戸籍謄本類によって相続人であることを証明する
・相続人全員が手続きに合意していることを示す。
の2つを満たせば、通常はスムーズにすすむ。それでもうまくいかない場合は、日本の裁判所で訴訟手続きをすれば名義変更を強行できる。



しかし、海外の取引所について、このような手続きがスムーズにいく保証はない。日本語を解するスタッフがいる保証もないし、ましてや戸籍や日本法に基づく相続の常識を理解している可能性も低い。
このような状況で、契約者本人が死亡した旨を連絡した場合、口座を凍結された上で、日本では入手不可能な書類を要求される等の展開に発展し、あきらめるか、見通しも不明で高額の費用がかかると見込まれる海外での訴訟手続きをしてみるか、というような究極の選択に陥る可能性がある。



現状で考え得る上策



そこで、次のような手続きをとるのが現在のところ上策と思われる。なお、国内の財産の相続財産については一般的には法律実務上するべきでないとされる方策も含んでいる。なので、国内の財産(国内仮想通貨の取引所を含む)については、このような方法は非推奨である。
また、これどおりにしたからといって手続きスタックしない保証があるわけではない。自分がそのような状況になった場合、考えうる方策というレベルである。



まずは、その海外仮想通貨取引所に対して、誰の件か明らかにせずに、一般論として、日本人が亡くなった場合の相続手続きを尋ねるメール等を送付してみる(英語でのメールになる可能性もあると思われる)。
その結果、日本の戸籍の提出等、日本法に精通していると思われる対応があった場合は、それに乗ればよい。



メールに対する返信がなかったり、要領を得なかったり、日本法上、困難な手続きを要求されていると思われる場合。その海外取引所のログインID,パスワード、連絡メールアドレス、2段階認証の電話番号等のいくつかを把握できているようであれば、相続人全員での合意のもと、適宜手続きをして、相続人の代表が管理する仮想通貨口座に送金する。
なお、この方法は、引き出せなくなるよりマシとの判断でのやや強硬策なので、慎重な判断が必要である。後日、この行為が問題視されたときに、裁判で違法と判断されるリスクがないとは言えない。できるだけ、そのリスクを下げるにはどうしたらよいかは、弁護士への相談をおすすめする。



いずれの方法でもうまくいかない場合に、海外取引所に対して直接、契約者がなくなった旨を伝えて手続きを確認する。



取引している取引所が不明な場合



亡くなった人のメールをみることができる状況であれば、メールに手かがりがある可能性が高い。



海外取引所しか保有していない場合はマレで、通常は国内取引所にも口座がある。というのは、日本円を仮想通貨を換金するには、通常、国内取引所の口座が必要だからである。
そこで国内取引所に対して残高だけでなく、送金先の一覧の開示を求める。そこから海外の取引所が判明する可能性も高い。
また、送金先がアドレスだけの場合は、各種ブロックチェーン・エクスプローラーの類を利用して、調査検討することで海外取引所が判明する可能性もある。
クレジットカードによる入金に対応とするところもあるので、クレジットカードの履歴が手がかりになることもある。



生前の対策(海外の仮想通貨取引所の相続)



生前に、海外の取引所のパスワード等を知らせて置くことは、諸事情から難しい場合が多いと言える。
そこで、たとえばパスワード紛失時にメールアドレスと携帯電話番号が必要なのであれば、万が一のとき、遺された人がそれらを復旧できるかを考えてみる。
たとえば、メールアドレスのパスワードを自分以外知らない場合
携帯電話会社やケーブルテレビ等、本人確認がしっかりしているところで作ったメールアドレスであれば、死亡後の相続手続きによって、遺された人がメールを引き継げる可能性が高い。
逆にgmailのように本人確認がほとんどなくメールアドレスを作成できる場合、遺された人がgoogleに連絡をとっても手続をすすめることは難しいと思われる→メールのパスワードの再設定の場合の手続として自らの携帯電話等を利用できるようにしておく→携帯電話を相続人が相続手続きで利用できれば、メールのパスワード再設定ができるような段取りを考えておく。



ウォレットで仮想通貨を管理している場合の相続手続



ウォレットというのは、自ら仮想通貨を管理する方法である。chrome等のブラウザの拡張機能として利用したり、スマートフォンのアプリとして利用したりするものや、USBに挿して利用するもの等がある。



有名なものとしては、メタマスク(イーサリアム、ポリゴン、バイナンススマートチェーン等に対応、chromeの拡張期のやスマートフォンのアプリとして利用する)phantom(ソラナのウォレット)、ledger(USBに挿して利用する)、Trezor等がある。



ウォレットで管理している場合、誰かに手続きをしてもらうということはできない。なので、パスワードもシードフレーズも不明な場合はどうにもならなくなる。



ウォレットの仕組みとしては、次のようなものが多い。
・既にウォレットが設定済みのブラウザ、PCやスマートフォンで操作する場合は、パスワードがわかれば操作できる。
・新たなブラウザ、PCやスマートフォンに設定する場合は、英単語12個または24個等のシードフレーズというものを利用して設定できる。設定済み端末でパスワードを忘れた場合も同様。



ウォレットがわかっている場合の相続手続き



スマートフォンにメタマスクや phantom がインストールされている。
chromeの拡張機能にメタマスクやphantomがインストールされている。
ledger等のハードウェアウォレットがある



といった場合、ウォレット内に仮想通貨が存在している可能性が高い。
このような場合、パスワードがわかれば仮想通貨を動かすことが出来る可能性が高い。



パスワードがわからない場合は、シードフレーズがどこかに残っていないか探すのも手である。パスワードの場合、使い回しが可能なので、パスワードをどこにもメモしていない可能性もある。その場合、探し出すのは難しい。
しかし、シードフレーズは一方的に設定される。しかも、12個とか24個の英単語なので、どこかにメモしている可能性が高く、探す目的物としても探しやすい。



パスワードもシードフレーズも秘密鍵(※)もわからない場合は、事実上、資金を動かすのは不可能と思われる。



※ウォレットは秘密鍵を管理するツールだが、秘密鍵自体はメモするのもかなり面倒な文字列なので、これを直接把握するのは、コマンドベースで仮想通貨管理している場合等、特殊な場合と思われる。



ウォレットが不明な場合の相続手続き



国内取引所の取引所からの出金履歴や、仮想通貨のエクスプローラー等を調査した結果、いくつかのアドレスについても本人が管理していたのではないかという場合がある。それ以外にも、ウォレットがあるかもしれないし、ないかもしれないという場合がありうる。



そのような場合、次のような調査をすることになる。
・chrome等のブラウザの拡張機能のインストール状況
・スマホのアプリにウォレットがないか
・ledger等のハードウェアウォレットを持っていないか
・PCに仮想通貨を管理するソフトが入っていないか
・シードフレーズと思われる英単語12個・24個等のメモがないか



生前の対策(仮想通貨ウォレットの相続)



ウォレットの相続の生前の対策は、なかなかよい案が思いつかないというのが率直なところである。
シードフレーズをどこかに残しておけば、それを手がかりにウォレットの復旧をできることになるが、逆にシードフレーズを見られたら、ウォレットの仮想通貨を自由に出されてしまうリスクがある。
なので、家族のそういう部分での信用状況と、万が一の際にウォレット財産が引き出し不能になるリスクとの兼ね合いを考えるしかない。
このような状況から、あまり高額な仮想通貨をウォレットで保管することは、少なくとも相続手続きの観点からは推奨しにくい。
高額の仮想通貨をウォレットで保管する必要がある場合は、シードフレーズの一部を家のわかりやすい場所に保管するとともに、残りの一部を誰かに託しておき、万が一の場合に家族に伝えてもらう等の工夫が必要なると思われる。

ブロックチェーンの種類(法的問題の前提)

8月 12th, 2022

ブロックチェーン上の法的問題の検討にあたっては、問題となった仮想通貨なりNFTなりゲームなりDAOなりが、どのブロックチェーンを利用しているのかを把握することが重要です
その他、自らブロックチェーン上のアプリを立ち上げようと考えるとき、仮想通貨やNFTの購入を考えるときも、それぞれのブロックチェーンの特徴は重要な考慮要素となります。



パブリックチェーンかプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンか



まずはイーサリアム等のパブリックチェーン上なのか、特定企業の中でのプライベートチェーンや企業グループ等のコンソーシアムチェーンかの区別が重要です。後者の場合、ブロックチェーン特有の法的問題をそれほど考慮せず、従来型の議論の枠組みで考えることができる余地が高いです。



区別の仕方



パブリックチェーンであれば、通常、そのチェーンの利用料としてイーサ(ETH)等のネイティブトークンの利用がガス代として必要となります。そのためにメタマスク等のウォレットの準備が必要となります。



逆にこのような面倒な手続きが必要がなしに、NFT等が購入できるとしたらプライベートチェーン等の可能性が高いといえます。たとえば、ID(メールアドレス等)とパスワードで本人確認した上でクレジットカード等で日本円で購入できる場合です。



なお、パブリックチェーン上の仮想通貨等だとしても、いわゆる取引所(※)で暗号資産を購入した場合はウォレット等は必要なくIDとパスワードでの管理になります。取引所で仮想通貨を保管している限りは、多くの場合、ブロックチェーン特有の法的問題はあまり発生せず、従来型の議論の枠組みで対応できることが多いと思われます。



※コインチェック、ビットフライヤー、ビットバンク、GMOコイン等です。



区別の理由



パブリックチェーンかプライベートチェーンかの区別が重要となる次の理由です。
ブロックチェーンを運営するには相当程度のコストがかかります。
仮想通貨やNFTを移転する際には、ブロックチェーン上に新たな記載をすることになり、そのためのコンピュータの稼働コストが発生します。そのコストを利用者がガス代として支払うのであれば運営者は必ずしも必要ありません。しかし、利用者がコストを支払わないのであれば、運営者がそのコストを支払い続ける必要があるため、運営者の存在が必須になります。運営者が想定されるのであれば、ブロックチェーン特有の議論に入らずに、運営者に対する債権としてとらえる余地が大きくなります。
たとえば、LINE Blockchainでは、NFTを購入した人が、NFT移転する際のガス代が不要です。その反面、運営者にはクラウドサービスのような料金表が提供されています。このサービスにもとづいてNFTサービスを提供している場合、提供者は月額の利用料を支払い続ける必要があります。
これがイーサリアム上のNFTの場合、はじめにNFTを作成(ミント)するときにガス代はかかります。その後はNFTを移転したい人がガス代を負担していくことになります。なので、はじめにNFTを作成した人等の運営者による継続的な費用が必須ではなく、NFTを誰かが提供していると考えることが難しくなります。債権というよりは、ブロックチェーン上の電子的物体に近くなります。



パブリックブロックチェーンの区別



台数による信頼性



ブロックチェーンの信頼性は、ブロックチェーンを構成するコンピュータ(ノード)の台数による部分が大きいです。
多数のノードが存在するビットコインやイーサリアムは信頼性が高いといえます。



仮にスピードが早くて、ガス代が安いブロックチェーンを作り上げたとしても、それを構成するコンピュータが大量に集まってくれていないと信頼性が低くなります。
というのは、ブロックチェーンの信頼性は、コンピュータ等の51%を奪われると損なわれる可能性が高いからです。



ただし、この問題は誰でもノードに加わることができるという特性にもとづいています。誰でも加わることができるので、悪意あるノードが加わるのを防ぐことができないからです。



そこで、BNBチェーン(バイナンススマートチェーン)のように、誰でもノードに加わることとはできないという方式をとっている場合もあります。この場合、ブロックチェーンの信頼性は、このブロックチェーンを提供しているバイナンスの信頼性に依存することになります。



この意味での信頼性の高さは、そのブロックチェーンのネイティブトークンの時価総額である程度把握することができます。時価総額が小さいブロックチェーンは、他の性能が高くても信頼性の点で弱いといえます。



ガス代の安さやスピード



信頼性の点ではイーサリアムに軍配があがります。イーサリアムはガス代が高くちょっとした操作にも相応の金額がかかります。2021年の終わり頃に色々ためした限りだと、送金で何百円、ちょっとした操作で何千円かかる感じでした。これがソラナのブロックチェーンだと送金で1円も手数料がかからないようです。
また、スピード面でもイーサリアムより早いとするものが多くあります。



ネイティブトークンの入手の容易性



イーサリアムを利用するにはイーサ(ETH)、ソラナを利用するにはソラナ(SOL)、バイナンススマートチェーンを利用するにはBNB、ポリゴンを利用するにはMATIC等のネイティブトークンといわれる仮想通貨が必要です。
イーサであれば、日本の取引所でも容易に入手できます。しかし、2022年8月時点で、ソラナやMATICは、ようやく買えるところが一つ2つでてきた程度。BNBは買えるところはなさそうです。こういったものを買うには、日本の取引所から海外の取引所に一旦仮想通貨を送金し、海外の取引所の購入するしかないといえます。
入手困難なネイティブトークンが必要なブロックチェーン上で動くサービスは、日本の顧客には提供しにくくなります。
パブリックブロックチェーンの現状で言うと、入手しやすいが利用料が高すぎて提供が難しいイーサリアムか、料金は安いがネイティブトークンの入手が困難なソラナやBNBといった状況になってしまっています。
日本でのNFTのサービスがパブリックブロックチェーンではなく、プライベートチェーンになりがちな理由の一端はここにあるのかもしれません。



マニュアル等の充実



みずからブロックチェーンを利用して何かサービスを提供しようとする場合、マニュアルやサンプルコードの充実は重要です。その点では、イーサリアムが圧倒しています。
バイナンススマートチェーン等では、イーサリアム互換(EVM互換)ということで、イーサリアムで動くコードを利用できることになっています。イーサリアム互換でないと、開発の難易度は高くなるといえます。



あらたなブロックチェーンが出てきたといったときは、そのブロックチェーンがEVM互換なのかはどうかは、その後利用者を増やせるかどうかについて重要な影響があります。



NFTの法的性質論の前提として

8月 6th, 2022

ブロックチェーン技術の代表的応用例として、昨年あたりからNFTが大きく話題になっています。
ただ、自分なりに理解した限りでは、その大きな売り文句である
「デジタルデータに唯一性を与えることができる」
は、かなり限られた条件下で実現できるだけのようです。
そして、それを前提にすると、それほど法的性質を論ずる価値があるとは言えないのでないかという気もします。そのあたりを書いていきます。



NFTの説明



NFTとは、ノンファンジブルトークンということですが、意味をつかむ助けにはなりません。
現状、ブロックチェーンでのトークンとされる主なものは次の2つです。
・仮想通貨(数えられて、「いくら持っている」ということを考えられる。
・NFT(通貨のように、数えられない。「何をもっている」というようなもの)
データの管理の仕方の単位は、いずれもアドレスです。
仮想通貨であれば
・アドレスA 55,000
・アドレスB 3,000
・アドレスC 0
というように管理されます。
NFTであれば
・アドレスA 1、4、8
・アドレスB 18、23
・アドレスC 何もなし
というように管理されます。
この1,4はIDのようなもので、NFT一つ一つに付与されます。それがどのアドレスに帰属しているかを管理します。そのうえで、典型的な方式としては、このNFTの追加情報を保存するネット上の場所を指定して、そこに
{ “name”: “Thor’s hammer”, →NFTの名前は トールのハンマー
“description”: “Mjölnir, the legendary hammer of the Norse god of thunder.”, NFT説明
“image”: “https://game.example/item-id-8u5h2m.png”, 画像データの保存場所
 ”strength”: 20強さ }
openzepplelinよりというような情報を保存します。つまり、ブロックチェーン上に保存されるのは、アドレスとIDの紐づけと、データ保存場所のurlだけで、実際の画像データはブロックチェーン上に保存されないのが通常です。



なぜ、画像データはブロックチェーン上に保存されないのか



ブロックチェーンの特徴であり利点は、
・何千何万台ものコンピュータに過去の履歴を含めて全データが保存されている。
・これを誰でも利用できる。
というところにあります。なので、ここに画像なり動画なりを保存すれば、何千何万台のコンピュータに永久保存されることになります。そんなことを許してしまったら、あっというまにコンピュータの保存容量がなくなりブロックチェーンが成り立たなくなります。そこで、容量の大きなデータは保存させない工夫が必要となります。その結果として、ブロックチェーン上に画像データの保存は基本的にできないとうことになります。
ただし、ドット絵のように工夫すれば保存容量をとらなくできるものについて、cryptopunksのようにイーサリアム上に画像データも保存している例外もあります。これをフルオンチェーンのNFTと言います。



画像データはブロックチェーンの永続性の対象外



そのような次第で、NFTのにおいて、ブロックチェーンの永続性や改ざん不能性を画像データの付与できているかというと、普通はできないということです。画像の保存場所はブロックチェーン外ですので、ここが改ざんされてしまうリスクはブロックチェーンを使わない場合とあまり変わりません。つまり、このNFT画像は自分のものだと思っていても、自分のアドレスとNFTのIDが永久保存されたとしても、画像が差し替えられてしまうというのはありうるということです。



同じ画像の異なるNFT作成は容易



ある画像がブロックチェーン上で唯一のものであることを担保する手段もありません。ある画像と全く同じ画像が別途NFT化されているのを防ぐ手段はありません。
NFTの作成にあたっては、それを管理するスマートコントラクトが必要でその中で画像データの保存場所も指定されます。その画像データの保存場所をみれば、同じ画像がないかどうかを調べることは(頑張れば)できると思われます。
しかし、別のスマートコントラクトを作って別の保存場所を指定することも容易ですので、そのように無数に立ち上がるスマートコントラクト間で画像の重複を防ぐのは難しいといえます。NFTの作成(ミントという)の日時をみて早いものを本当とみなすというような暗黙ルールが形成される余地はないとはいえませんが、だいぶ「唯一性の永久担保」というものに比べると、ゆるい気がします。



ゲームアイテムならうまくいく



ただオンラインゲームのアイテムをNFT化した場合はうまくいきます。
というのは、正しいスマートコントラクトアドレスで管理されているアイテム出ない限りゲーム内で利用できないからです。偽物が出回り被害者が出る余地はありますが、本物と偽物は明確に区別できます。
ゲームアイテムをパブリックチェーン上でNFT化することで、ゲーム運営会社を介さずに、ゲームアイテムの譲渡が可能になります。



NFTアートの正当性担保には権威が必要



ゲームアイテムでうまくいく理由は、特定のスマートコントラクトアドレスが正当だといえるからです。
なので、アート画像でも特定のスマートコントラクトアドレスで発行されたものが正当なもので、他は偽物だということが言えれば、同様に正当性が担保されることになります。
しかし、ゲームアイテムであれば利用できる・利用できないという明確な基準がありますが、アートの場合は一筋縄ではいきません。
たとえば、特定のアニメキャラクターのように現実世界での権利保有者が明確で、その権利保有者が特定のアドレスでNFTを発行した、という状況であればそのアドレスの正当性は信頼できます。
しかし、無名のアーティスト等が自らの画像を発行するような状況でそのような権威付けを得ることはなかなかイメージをつかみにくいです。やるとしたら、相当程度、現実世界での確認手続き等をした上でということになりそうです。



NFTアートの実現可能性と分散型との乖離



今年になってWEB3.0なんて言葉が出回ります。基本的にはブロックチェーンという分散型システムの中で中央管理者の権利なしにうまくいく世界観を指しています。
ところが、NFTアートに関しては、上記の通りその世界観ではうまくいかなさそうです。現実世界での権威の裏付けがあってはじめてうまくいくような気がします。
日本企業が自ら立ち上げたプライベートチェーンのようなところでNFTを発行するような話を聞いたとき、当初私はそれではブロックチェーンでのNFTとして無意味なのではないかという気がしていました。
しかし、NFTに関していうと、パブリックチェーン上で立ち上げたところで、結局のところ特定企業なりの信頼を前提にしないとうまくいかないとすると、プライベートチェーンでもよいような気がします(※)。
で(このあたりはよくわかってないのですが)、プライベートチェーンでよいのであれば、そもそもブロックチェーンでなくて従来型のサーバーでも同じことができるのではないか。という気もしてきて、NFTアートとブロックチェーンとの関係が乖離していきます。



※パブリックチェーンを使うメリットは、企業がそのNFT事業から撤退しても、NFTは存続するという点と思われます。大昔に発行されたキャラクターのカードが取引され続ける感じのことができるということです。



NFTの法的性質



NFTの法的性質を論じるとき、あたかもパブリックチェーン上で特定の権威の裏付けなしにデジタルデータの唯一性が担保され、ブロックチェーン上での改ざん不能性も実現されることを前提にしているような気がします。
しかし、上記のように、その前提は「どうかな」という気がします。



いずれ、このようなNFTの性質を前提に法的性質について書こうと思います。

スマートコントラクトの私法的性質

8月 3rd, 2022

ブロックチェーンが大きく飛躍するきっかけとなると言われるのがスマートコントラクトです。
ビットコインでは通貨の送金がメインでした。イーサリアムではスマートコントラクトといってコンピュータ・プログラムを利用できるため様々なことができます。様々なことといってもピンとこないので,まずモデル的な説明をします(日本法では違法!と言われそうですが)。
・プログラムなので乱数を発生させて,サイコロを振らせることができます(※)。
・同時に,ブロックチェーンなので仮想通貨のやりとりができます。
→スマートコントラクトに対してお金を預け入れた結果,サイコロの目にあわせて,ハズレだったり,お金が何倍かになって戻ってきたりする,スロットマシーン的な仕組みを実現できる。



より現実的に,現在スマートコントラクトによって実現しているのは次のようなものです。
・別の仮想通貨の作成(ステーブルコイン,ガバナンストークン等)
・NFT(ノンファンジブルトークン→通貨のように量的でないトークン)の作成
・仮想通貨同士の交換→DEX(分散型取引所 uniswap pancakeswap)
・仮想通貨の貸し借り(Defiの一種。compoundが有名)
・DAO(分散型自立組織)



スマートコントラクトの存在は,ビットコインの法的性質以上に,複雑怪奇で面白い法的議論を導きます。
ビットコインの法的性質は,法的な権利の客体の話でしたが,スマートコントラクトは法的な権利の主体の話になってきます。



※実際には,ブロックチェーン上の乱数の発生には様々な問題があります。



スマートコントラクトの構造



イーサリアム上,スマートコントラクトとアドレス,人間(自然人と法人等)との関係は次のようになります。
・仮想通貨の保持,NFTの保持,送金の主体等のイーサリアム利用の単位はアドレスである。
・アドレスは人間が持っている場合と,スマートコントラクトが持っている場合がある。
アドレスを持っているのが人間だけであれば,ビットコイン同様,法的主体についてはあまり問題になることはありません。しかし,どの人間にも帰属していないアドレス,つまりスマートコントラクトのアドレスに仮想通貨が帰属したり,スマートコントラクトのアドレスにお金を送金したり,そこからお金を借りたりできるということにより,法的にどう考えるべきか複雑な問題が発生します。



もう少しスマートコントラクトを説明します。
通常の送金等の指示はブロックチェーン上に「AからBに○送金する」という内容で登録されます。ブロックチェーンを構成する何万・何千のコンピュータに同じ内容が永久保存されます。その集計結果があるアドレスの残高になります。
スマートコントラクトの場合,特定のプログラムがブロックチェーン上に登録(デプロイという)されます。ブロックチェーンを構成する何万・何千のコンピュータに同じ内容のプログラムが永久保存されます。登録(デプロイ)されたときにアドレスが発行されます。そのアドレスを利用して誰でもそのプログラムを呼び出すことができます。



永久保存される→つまり変更ができないということです。はじめに変更できるパラメータを作っておくことはできます。でも,それ以外はできません。仮にバグがあっても修正できないとされています。



プログラムを登録する際には人間がもっているアドレスから行うのが通常なので,その登録をした人間を想定することはできます。しかし,
・ブロックチェーンのプログラムの大半はコピペによるものでありプログラムに個性がないことが多い
・登録した本人も修正はできず,特に権限を設定しなければ,登録した本人はそのスマートコントラクトに対して特別関係があるとは限らない。
ということからすると,常に登録した人がプログラムの管理者とは言い切れないことになりそうです。ビットコインの運営者がサトシナカモトであるとは言えないのと同様な感じと思われます。



スマートコントラクトの管理者とスマートコントラクトとの契約



現状、多くのスマートコントラクトについては、ある程度、発行者・管理者を想定できることが多いです。
ステーブルコインの発行にしても企業体が発行主体であったり、分散化したDAOが運営しているといっても、(法人格の有無はともあれ)人間の集まりを想定することができます。



しかし、例えば、「お金を預けることができ、預けたアドレスが引き出し司令を出すと引き出すことができる」というシンプルで無個性なプログラムを、何らかのボットが自動的にどからかコピーして、ブロックチェーン上に登録(デプロイ)したとします。で、意外にこのスマートコントラクトが重宝されて使う人が出てきたとします。そしてプログラムの変更はできないとします。
このような場合に、スマートコントラクトの管理者を想定することは、かなり無理やりな感じがでてきます。さらに、常にスマートコントラクトの管理者の特定を必要とする法的構成を前提とすると、管理者を特定できない場合は、それ以上は前に進めないということになりかねません。むしろ、スマートコントラクト自体に何らかの法的主体性を認める(「特定のスマートコントラクトに対して仮想通貨を寄託した」という事実主張を法的に意味があるものと扱う)ほうがより有効なのではないかと思われます。
「管理者がいない場合は管理者が運営するものとし、いない場合はスマートコントラクトに主体性を認める」ということも考えられますが、管理者がいないかどうかの把握が困難なことを考えれば、管理者がいる場合も「スマートコントラクトと契約した。そのスマートコントラクトの管理者は〇〇である」という構成を認めたほうがよいのかも、という気もします。



onlyowner



小ネタ的ですが、イーサリアムのスマートコントラクトでよく使われるSolidityという言語の勉強をすると、OnlyOwnerという修飾子の話が比較的はじめのほうに出てきます。これは、指定したアドレスを当該スマートコントラクトのownerに指定して、そのownerアドレスからでないと実行できない関数を指定したりできます。このonlyownerがあるとスマートコントラクトを現在管理していると思われる人間アドレスの存在を追うことができるといえます。
なお、ブロックチェーンのデータは公開されているので、スマートコントラクトのプログラムも公開されています。
とはいえ、一部のプログラムはsolidityのプログラムを公表していますが、それ以外はプログラムの内容を確認するのはそれなりに面倒そうです。



全体像への再考



このように、スマートコントラクトは、法的な主体について再検討を要請する可能性が強いといえます。
ビットコインの法的性質についての議論もこの観点から再検討する必要があるかもしれません。というのも権利客体だけの問題であれば、何らかの法的財産権を認めても良いのではないか、という議論に親近感があります。しかし権利主体まで認めるという話になってくると、全体として法的な権利主体・権利客体とは認めない、という方向にしておいたほうがよいのではないか、ということもありそうだからです。
ブロックチェーンの優れた特徴は国境をまたいだやりとりが容易だということです。インド人が作ったプログラムをブラジル人がブロックチェーン上に登録(デプロイ)し、フランス人と日本人がそこに預けられている仮想通貨(この仮想通貨の発行はフィリピン人)の帰属を争っている。なんて場合に、日本法での位置づけを議論することに意味があるのかは、かなり怪しいといえます。
さらに、ビットコイン上での法的性質の議論がひそかに前提にしているように、どのように日本の法律家が議論したところで、ビットコインのネットワークに対して日本の司法の強制力は無力だということです。判決で、特定の人の権利だと確定したところで、ブロックチェーン上にその内容を強制登録することはできず、ブロックチェーン外で精算するのが精一杯です。これは、日本に限らず、どこの国の司法でも同様です。
では、どうするのだ、というのがブロックチェーンの私法的性質論の本質なのだろうと思います。