Archive for the ‘弁護士勝俣豪の法律解説(契約編)’ Category

賃貸借契約書2

土曜日, 12月 8th, 2012
賃貸借契約は、普通の人が、契約書に接することの多い契約です。
はじめから自宅を購入するのでなければ、結婚と同時に契約することも多いでしょう。

貸す側は、もともとの資産家ということもありますが、サラリーマン投資家という
ような方も多いです。

家賃でローンを返済していけば、ローンが終わると元手をかけずに
マンションが一部屋手に入っているという仕組みです。

もちろん、借り手が見つからなくても、ローンは自己負担ですし、
見つかっても、ローン額より安ければ、その差額は自己負担ですので
そういうリスクがあります。

そういうリスクが顕在化して、どうにもならなくなって
当事務所で破産手続きをとる方も少なからずいます。

でも、普通の事業に比べると、ましかな、と思うところもあります。

普通の事業を自分で営んでいると、破産と同時に失職するのが
通常ですから、今後の生活をどうするのか、なかなか、大変です。

でも、サラリーマン大家がうまくいかなくて、破産しても
普通はサラリーマン仕事に影響はありませんから、
特に生活に困ることはありません。

他に自宅等の財産があれば、破産手続きで失うことになりますが、
もし自宅が賃貸だったり社宅だったりしたら、ほとんど生活に影響はないかもしれません。

そんなわけで、うまくいった場合に、得られるメリットと比べると
比較的リスクは少ないのかな、と思います。

では、お前がやれ、と思うかもしれませんが、
弁護士業は、破産が欠格事由ですから、弁護士が大家業に手を出して
破産をすると、弁護士業も失職です。
そこが、特に破産が欠格とならない普通のサラリーマンと違います。
破産が欠格とならない仕事だったら、自分も手を出していたかも?
と思いますが、基本的には、人口減少社会では斜陽産業ですから
なかなか大変なのかもしれません。

賃貸借契約書1

木曜日, 12月 6th, 2012
賃貸借とは、お金をもらって、物を貸す契約です。

ただで、貸すときは使用貸借という契約です。

賃貸借の対象は、色々ありますが、不動産の話がメインです。

車の場合、レンタカーとか、カーリースとかも賃貸借の一種だし、
さらに、リースと言い出すと、本当に色々ありますが、
その場合は、また、色々複雑になります。

そこで、主に典型的に賃貸借として考える場合は、不動産の賃貸借の話になります。

不動産、つまり土地や建物、の賃貸借については、借地借家法が出てきます。
土地を借りるのを借地、家(建物)を借りるのが借家です。

契約は、本来、契約自由の原則というのがあって、
民法に色々ルールが書いてあっても、それは任意規定といって
別の内容を決めても大丈夫とうことになっています。

でも、金の貸し借りの消費貸借や、不動産の賃貸借という話になると
契約自由にまかせておくと、弱い立場と言われる借り手が
ひどい契約を結ばされる・・・
ということで、任意規定の逆の強行規定を定めた借地借家法のような
法律が出てきます。

消費貸借の場合は、強行規定で規制しているのは金利のあたり(利息制限法)
ですが、借地借家法は、もっと幅広く規定しています。

消費貸借契約書4

月曜日, 11月 19th, 2012
消費貸借契約書は、普通に紙に書けば、大丈夫です。
でも、よりガッチリした書面にしたければ、公正証書にします。

公正証書は、公証役場にいる公証人が作ってくれます。

公正証書にすると何が違うかというと、
もし払わなかったときの、強制回収、
つまり差し押さえが、簡単だということです。

つまり
ただの紙→裁判→勝訴→差し押さえ
ですが、
公正証書→差し押さえ
ということで、裁判手続きを省略できます。

もっとも、差し押さえは、
収入がしっかりしている
→勤め先がしっかりしていて、勤め先を把握できている。
財産を把握している
→自己所有の不動産があり、担保もついていない
なんてときは、有効ですが、
財産も収入もないような場合は、あまり役に立ちません。

そうすると、公正証書にする手間・費用を考えると
まあ、普通の紙でよいか?
ということも多いです。

 

消費貸借契約書3

水曜日, 11月 14th, 2012
お金の貸し借りを典型とする消費貸借契約書の続きです。
○○円を借りたということが書いてあれば,
利息や返済期限の記載は必須でないことは前回書きました。
でも,通常は書いてあります。

他に必須でないけど,よく書いてあるのが,損害金の利率です。
つまり,遅れた場合の利率です。
普通に約束通り払っていれば,利息はなし,とか低利率だけど
約束に遅れたら,もっととるよ
という利率です。

この記載は,もし書かないでおいた場合は,基本的には
法定利率5%が損害金利率になります。

返済に遅れない場合の利率は,何も約束しない場合は0%だけど
返済に遅れた場合の利率は,何も約束しない場合は5%ということです。

5%を高いとみるか,安いとみるか。
その昔,ガンガンインフレが進んでいた頃は,安すぎでしたが,
今の銀行利率を考えると,悪くはないのかも知れません。

この損害金の利率につても,利息制限法とか出資法で
上限が定められています。

びっくりしたー 消費貸借契約 わき道

木曜日, 5月 10th, 2012
昨日付で,消費貸借契約について
利息を決めないと基本的には無利息です。
と書きました。

ところが,本日入手した,弁護士が書いた少し軽め,でも基本まじめな本を読むと
個人間の貸し借りで,利息の定めがない場合は年5%の利息がつく
と書いてあります。

・・・・・。はじめは,「デタラメ書いちゃって。やれやれ」と思いましたが,
もしかして,自分が勘違いしているかも。
未だに,そういうことはマレにあります。
当たり前だと思っていたことが,実は調べ直してみたら
勘違いで,冷や汗ということが。

六法で法定利息5%を規定したの民法404条を見てみます。
当然,そこには,そんなことは書いてありません。
でもそこに記載された関連判例で,
特約のない限り,借主は,消費貸借成立の日から利息を支払うべき義務がある。
という最高裁の判例が記載されています。
ということは自分が間違っていたのか?

でも,そうしたら,
消費貸借と利息契約を別に考える,法律家の通常の発想との整合性は?
商法513条は,商人間の金銭消費貸借で利息の約定がなくても
利息の請求できるとしてますが,それは商人以外は特約がなければ
利息を請求できないからではないか?

色々と頭の中をめぐります。

件の最高裁判例を判例検索ソフトで見てみます。
この判例は,特約がなくても利息がつくという意味ではなくて
利息の約束をしている件について
利息の計算の元になる期間について特約がないときは,
契約成立の日から計算するという判例のようです。
六法の要約の仕方が不親切ですね。

念のため色々書籍を調べますが,
消費貸借は無利息が原則という記載が多々あり,
ようやく,自分の勘違いではない,
自分の理解が通常の理解であることが分かり,ほっと一息です。

こういうこともよくあります。
でも,やはり他の弁護士が書いていることと
自分の認識が違っていたら,
念のため調べてみないと,安心できません。

消費貸借契約書2

水曜日, 5月 9th, 2012
お金の貸し借りを典型とする消費貸借契約書の続きです。

消費貸借契約書には何を書く必要があるのでしょうか?

最低限,金額と,それがあげたのではなく,貸したのだということが
分かること書いてある必要があります。
「100万円を貸しました」
と書けばよいということです。

よく100万円の前に「金」とか入れて「金100万円」
と書きますが,これは100の前にもう一つ1を付け加えて,あとで
1100万円にされないためです。
ですから,金と100の間に空白があったら意味がありません。

返済期限はどうでしょうか?
書いた方がよいに決まってますが,書かないと絶対駄目なわけではありません。
返済期限を決めなかったときは,そろそろ返してね,と言って
そろそろに相当な期間を言えば,そのときに返すことになります。
このように,契約条項に漏れがあったときのルールが民法に書いてあり,
今の話は,591条に書いてあります。

利息はどうでしょうか?
無利息の消費貸借もありますので,必須ではありません。
でも利息を決めないと基本的には無利息です。
でも,返済期間経過後は,5%の遅延利息がつくことになります。

利息は色々難しくて ,あまり高く決めすぎると,利息制限法で無効になったり,
出資法でお縄になったりします。

消費貸借契約契約書

木曜日, 4月 19th, 2012
題名は、しょうひたいしゃくけいやくしょ と読みます。
消費貸借等という言葉自体、一般用語としては意味不明ですが、
お金の貸し借りは、通常、消費貸借契約になります。

以前、住宅ローンを組んだときに、銀行の担当者があたりまえのように
「きんしょー、きんしょー」と言っており、「きんしょー、って何ですか」
と聞いたら、そんなこと聞くなといわんばかりに「金銭消費貸借契約書」
のことと教えてもらいました。

同じ貸し借りでも、家の貸し借りは賃貸借と言います。
消費貸借と何が違うのかというと、賃貸借は借りたものそのものを返す必要があるけど、
消費貸借では、借りた1万円札をそのまま返す必要があるわけではなく、
別の1万円札でもよいという違いということです。

金銭、つまりお金以外の消費貸借以外では、その昔
お米の消費貸借というようなこともあるようです。

さて、この消費貸借契約は、法学者の考えによると、
他の契約とは違う2つの特徴があるようです。
要物契約で
片務契約だ、
ということです。

要物契約とは、物を要する、つまり
契約成立には口約束だけではなく 、金を渡さないとならない
ということ。

片務契約とは、片方だけ義務がある、つまり
貸主は何の義務もなく、借主だけに義務がある
ということです。

そういうわけで、昔から
貸主がお金を渡すのと引き換えに、借主は
借用書を差し出して、借用書には借主のサインだけあるということになります。

契約書に両当事者のサインが必要なのは、
両当事者がともに義務を負うからです。
そうすると、片務契約では、義務を負う人だけのサインがあれば
足りることになります。

そこで、消費貸借契約では、双方サインをする契約書ではなく
借主だけがサインをした借用書で足りるということになります。

でも現実には、銀行は「キンショー」を要求し、双方サインします。
これは、現実のお金の貸し借りの契約は、民法に書いてある
消費貸借契約よりずっと複雑になっているため、
片務契約と割り切れない部分も多いから、とうい面があると思います。
(諸々のご指導という面のほうが強いかもしれませんが)

 

代理(契約書の署名・押印)

火曜日, 2月 7th, 2012
署名・押印は自分でするのが,標準型ですが,
人にやってもらう場合もあります。

典型的なのは,代理です。
かわりに契約してもらうということです。
弁護士の民事の仕事は,大半がこの
代理の仕事です。
代理して,契約し,
代理して,交渉し
代理して,裁判する
という感じです。

代理で契約する場合は,
代理人が署名し押印します。

通常,代理人は自分で選びますが,
勝手に決まることもあります。

典型が,親権です。
親権者は,法定代理人として,
子供の代わりに契約できます。

また,成年後見人も,本人が選ぶわけではなく
裁判所が選びます。

こういう場合は,本人のあずかりしらぬところで
代理人が契約しても,本人はその契約の
責任を負います。

似たものに,代表というものがあります。
会社等の法人は自分で署名できないから,
代わりに代表権がある代表取締役等が
サインします。

ですから,法人のサインは

○○会社 印

では正確でなく

○○会社
代表取締役 某 印

ということになっているのです。

 
 

契約書の署名・押印

金曜日, 1月 27th, 2012
契約書には,契約した人の名前を書きます。
あたりまえですが,これは重要です。

自分のあずかりしらぬところで,誰かが勝手に
自分の名前を書いて契約しても
その契約の責任を負うことは,普通,ありません。

ですから,契約書をタテにする前提として,
「契約書にサインした」ことが必要となります。

じゃあ,サインをしたのに,「そんな契約はみたこともない」
と言い出したらどうなるか?
「あんたは,サインをした」ということを証拠で固めなければなりません。

では筆跡鑑定か,というとあまり一般的ではないし,
その信用性の評価については,日本の裁判実務では,色々です。

日本で一般的なのは,「ハンコがあんたのものだ」ということで
「あんたがサインした」という 形です。

そして,「ハンコがあんたのものだ」ということを簡単に証拠にできるために
印鑑証明と実印という制度があります。
実印が実印として意味があるのは,印鑑証明書がそれを誰かのハンコと
証明してくれるからですので,実印と印鑑証明書はセットで考えることになります。

実印でないハンコの場合は,他の書面等で同じハンコを使っているものはないか
とか色々大変になってきます。

ですから大事な書面には,実印と印鑑証明というのが基本になります。

 

契約書の日付

水曜日, 11月 9th, 2011
契約書にはたいてい日付欄があります。
契約書の題名に比べて,日付は大事です。

契約書等は,「ある約束をした」という 出来事を
書面で形で残しておくものです。
そして,法律家,特に裁判官の思考過程としては,
出来事は日付で把握します。
ですから,何月何日に,これこれの約束をした。
という事実であれば,出来事して意味がありますが,
日付がなく,「これこれの約束をした」というのは
裁判官の思考過程に乗りにくくなります。
そんなわけで,日付は法律上の書面
→つまり,最終的には裁判で意味がある書面
として形を整える上では,日付はとても重要になります。

さらに,契約の特定という点でも,日付は重要になります。
お菓子を3つ買う契約をして,そのあと2つ買う契約をして
そのあとまた,3つ買う契約をしたときに,
初めの契約と3つめの契約を区別するには,通常
何月何日付契約と何月何日付契約というように区別します。
それぞれ,日付がない契約書だと,区別しにくくなります。

また,同じ契約について,複数の書面があって内容が矛盾している場合,
あとで作成された書面で,前の書面の内容を取り消したと考えることが
多いです。
そうすると,書面の前後関係が大事になって,やはり日付が大事になります。

日付だけでなく,時間もあったほうがよいのでは?
と思うかも知れませんが,裁判で問題となるような契約を
1日に2つもすることは通常ないので,日付だけで通常は大丈夫です。
でも,通常ではない場合で,1日に複数の似たような契約をする場合は
日付も入れた方がよいかも知れません。

契約とは違いますが,破産の決定のように,ある出来事が
破産決定の前か後かとても大事なものについては,
日付でなく時間も表示されます。