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医術と呪術

土曜日, 9月 18th, 2021

昔の人は、天災を為政者のせいにして云々、とはよく言われますが、「昔の人も」というところでしょう。
「これは天災ではない。人災だ!」等とワナワナしだす人が出て、ヒタヒタと伝播していって、なんだか総理大臣交代です。



人は病気にかかると、誰かに何とかしてもらいたくなります。そのような意識構造が生み出したのが医学と言えましょう。治るから医学が生まれるのではなく、人間の意識が医学を必要とするから医学が生まれる。現代医学を前提にすると「何を言ってんだ」となるかもしれませんが、現代医学からみて「有害かよくて無意味」な場合のほうが多い行為が、人類の大半の歴史において医学として尊重されていたことを踏まえれば、そういうことになろうかと思います。
昔話で、病気の親のために自らを犠牲にする美談があります。でも、その結果もらった薬というのは、カエルを干して粉末にしたようなシロモノだったのでしょう。これは、いじわるな笑いをするための話ではなく、たとえそうであっても、人間は医学にすがらざるを得ないという話です。
で、人間は理屈っぽいので、病気を治そうと思うと、病気の原因を考えついて色々理屈をひねり出します。悪魔か、キツネか瘴気か、そういった原因と理論を作り出します。で、それに基づいた医術を施す。色々な煙(キツネが嫌がる臭いがする)をたいたり、お経を読んだり。ということで、呪術です。医学も宗教も、人間の意識構造が生んだ普遍的な現象なのかもしれません。



さて、霊感商法というものがあって、高価な壺を交わされた人は、何か不幸が起こっても、「この壺がなければ、もっと大変なことになっていた」といって壺に感謝する。こうなってしまうと、壺の呪縛を解くことはなかなか困難です。
さて、マスク。日本中どこにって行ってもマスク、マスク。私も、一時期は日本での感染者が少ないので、思わぬデメリットがある可能性もあるが、感染予防には効果があるかもという気もしました。でも、感染者はどんどん増えます。どんなに増えても、「マスクをしていなければ、もっと感染者が増えていた」ということなのか、マスクの効用を疑わない。何が起こったらマスクをやめることになるのか、誰にもわかりません。
霊感商法を信ずる集団は、それに疑いを持つ者の行動を監視して、怪しい行動をする者に適宜社会的制裁を加えて、団結を維持するともいわれています。マスクもそんなところでしょうか。



ワクチンの接種が順調にすすんでいます。いつの間にか接種率がずいぶん高くなっています。
さて、ワクチンが安全だとか言っている人がいます。
今回は、通常の場合のワクチンの審査を端折って、特別に短期で承認したんです。もし、これで安全だって言えるなら、今までの審査体制に根拠がなかったということです。そんなことないでしょう。
現状からすれば、ワクチンは安全だとは言い切れないが、ワクチンを打った場合の感染率の低下や重症率の低下からすれば、打ったほうがひどい目にあう可能性が低そう、というあたりでしょう。ただ、重症化の確率はその人の属性によって大幅に違うし、今後の人生の長さ(つまり現時点で把握できな長期的なデメリットの可能性)も違う。なので、誰にとってもワクチン接種の合理性があるかは、なんとも言えないということでしょう。
とはいえ、社会全体として考えると、ワクチンを打った人が多いほうがよいとも言えます。そうなると、安全だと言ってみたり、その他いろいろ言って、何とかワクチンを接種させようという意図が社会全体に生まれます。
そんなときは、タブーです。夜に口笛吹くとどうのとか。体の一部を加工してみたり。最近のトレンドでいえば、聖典の民たちが同性愛を禁じたりしたあたりも、社会全体の目的を達するためのタブーといえそうです。



そんなことをしているうちに急速に感染者が減ってきました。別に自粛する人が増えたわけでもないのに。色々、理由を言っていますが、「わからない」というのが正直なところでしょう。
ウィルス学とか免疫学の最前線を紹介するような本をみていると、いずれも従来の常識を覆す発見が相次いでいる状況です。10年前の常識は通用しないようなレベルです。今回の問題について考えるだけの知見は人類は得ていないのです。で、正直な専門家は、色々聞かれても「わからない」というのでしょうが、そういう人は相手にされないので、専門家の意見として思い付きをペラペラしゃべる人の意見が世間に満ちます。
おそらくのところ、よくわからない機序によってウイルス感染者は減ったり増えたりするのだと思います。インフルエンザも、いつの間にか流行が終わります。冬は乾燥して湿度が低いから云々とか、また専門家ペラペラが言いますが、インフルエンザは、どこからきたのでしょう?高温多湿な香港だった気が。高温多湿な国でもインフルエンザは流行します。以前BBCを聞いていたら、風邪だかインフルエンザだかが冬に流行するのは、冬は曇っていて日光が少ないからだなんてことを専門家が言っていたように私の耳には聞こえました。きっと、イギリスの冬はそうなのでしょう。自分の経験の範囲で、思い付きをペラペラ話すものです。
そんなわけで、現状ウィルスや免疫がからむことについてペラペラが話している理屈は、大方その機序が判明した未来からすると、キツネがついたとか瘴気がどうのとかいうのと同レベルの話なのであろうと思います。



そのようなわけで医術と呪術が厳密には異なるものであることが、お分かりいただけたかと思います。