Archive for the ‘弁護士柏木研一郎の法律解説’ Category

HBV(B型肝炎ウイルス)は悪性リンパ腫の発症にも関与!?

火曜日, 11月 29th, 2016
B型肝炎ウイルスに関する情報です。

調べ物をしていて初めて知ったのですが,HBV(B型肝炎ウイルス)キャリアの方は,そうでない方に比べ,悪性リンパ腫を発症する可能性が高くなるかもしれないようです。

国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
「多目的コホート研究(JPHC Study) B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス感染者の悪性リンパ腫リスク」
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3541.html
なお,両者の相関のメカニズムが解明されたわけではありません。

またこの研究の対象者は,1993年に40~69歳だった約2万人のようです。
悪性リンパ腫の発生率が一般に10万人に約10人程と言われていることからすると(註1),悪性リンパ腫のサンプル数はたった数名なのではないかという気がします。

また,HBVキャリアの出現率が1993年に0.41%ほどであったことからすると(註2),HBVキャリアのサンプル数も100人に満たないくらいではないかという気がします。

統計的にこの数字をどう見るべきかわかりませんが,直感的には,決して多くないサンプル数のような気がします。

ですので,まだ言えることは多くは無いようですが,HBVキャリアの方は,慢性肝炎や肝がん等のほか,悪性リンパ腫という病気についても,理解を深めておいた方が安全なのかもしれない,ということは言えそうです。

(私個人はまだ不勉強で,どのような検査・心がけで悪性リンパ腫の早期発見が可能なのかわかっておりませんが…)

——————
註1:Wikipedia「悪性リンパ腫」平成28年11月29日閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E6%80%A7%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%91%E8%85%AB 註2:国立感染症研究所 感染症情報センター「献血者におけるHBV陽性率の動向とB型肝炎感染初期例のHBV遺伝子型頻度」平成28年11月29日閲覧
http://idsc.nih.go.jp/iasr/27/319/dj3193.html
B型肝炎給付金に詳しいのはマイタウン法律事務所

「B型肝炎ウイルスキャリアですが,通院はしていません。でも,健康診断を受けているので(症状は無いので)大丈夫です」という方に言いたいこと。(後編)

金曜日, 4月 8th, 2016
前回の続きです。

健康診断を受けているから・症状が無いから,という方へ

前回書いたように,HBe抗原陰性の非活動性キャリア(すなわち症状が無い方)に,突然肝がんが発生するという事もあります。

確かに,症状が無い方と,慢性肝炎の方と,肝硬変の方を比べたら,肝硬変の方が最も肝がんの発生リスクは高いです。

しかし,実際には,肝硬変症に至る前に肝がんを発生する例は少なからずあり,特にB型肝炎ウイルスの場合には,正常に近い肝臓から肝がんが発生する場合もあり注意が必要とされています(参考文献2)。

実際に,私のお客様でも,肝硬変と診断されたことがない肝がんの患者さんが多くいらっしゃいます。
健康診断では,そのような肝がんが早期に発見されるとは,限らないのではないでしょうか。

また,症状がないから,という言葉には,とても心配にさせられます。
有名な言葉ですが,肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ,少々不具合が有っても症状が現れません。
症状があったら…たぶんそれは,慢性肝炎や軽度の肝硬変や,初期の肝がんでは無いような予感がしませんでしょうか。

専門医に通うと何をしてもらえるのか

血液検査(健康診断とは内容が一部異なります)に加え,肝がんの早期発見のため,腹部超音波検査を主体として,腫瘍マーカー測定や,場合によってはCT,MRI検査も行われることになると思われます(参考文献3)。
その結果として治療は不要だと判断されれば,特には薬が出ることも無いかと思います。

慢性肝炎の治療が必要と判断されると,多くは核酸アナログ製剤(特にエンテカビル)が投与されることになるかと思いますが,場合によりペグインターフェロンが用いられたリ,またそれらが併用されることもあります(参考文献2,4)。

なお治療が必要な場合には,治療費の助成についての案内が有ると思いますので,必ず申請をするようにして下さい。

いずれにしても,専門医が行う検査は,目的も,検査内容も,健康診断と違いそうなことをわかって頂けるとよいなと思います。

最後に

あまり怖いことを言うのも嫌ですし,実際多くの方は,何の症状が出ることも無く健康に過ごされています。
しかし,毎回毎回ちょっとうるさく言う事で,一人でも多くの方の肝がんを防げれば,言った甲斐があったなと思うのです。

ですので,私たちは症状が無い方の相談ももちろん受けます。でも,特に私に相談される方は,ちゃんと専門医療機関へ通院するようにして下さい。相談の際も,私は絶対これを言いますので。

もちろん私は,治療中の方からも,いろいろ治療のお話しを聞かせて頂くのが好きなので,お気軽にご相談いただきたいと思います。宜しくお願いします。



参考文献
1)沖田極・幕内雅敏編.2009.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝がん」医薬ジャーナル社.
2)熊田博光編.2012.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝炎ウイルス―B型・C型」医薬ジャーナル社.
3)日本肝臓学会編.2013.「肝癌診療ガイドライン 2013年版」<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp>(2016/4/5アクセス)
4)日本肝臓学会編.2015.「B型肝炎治療ガイドライン(第2.1版)」
<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b>(2016/4/5アクセス)

「B型肝炎ウイルスキャリアですが,通院はしていません。でも,健康診断を受けているので(症状は無いので)大丈夫です」という方に言いたいこと。(前編)

水曜日, 4月 6th, 2016
B型肝炎訴訟については,どの弁護士よりも掘り下げて考えたい柏木です。
表題のセリフは,症状のない方(無症候キャリアの方)と相談をすると,かなり高い確率で言われるものです。

弁護士の多くは,特に何も言わないかもしれませんし,中には症状が無いと報酬も低いので,依頼を断る人もいるなどと聞きますが,私が言いたい事はちょっと違います。
表題のセリフは,間違っていると思います。 
「肝疾患の専門医療機関に通院して,お医者様の指示に従って下さい。 (そしてそれから,給付金のことが気になったら私に聞いてください)」 
これが私が言いたいことなのですが,せっかくなので,もう少し説明をします。 
なお専門医療機関については,こちら等で,各都道府県毎の「肝疾患専門医療機関」をお調べ下さい。
肝炎情報センター
http://www.kanen.ncgm.go.jp/index.html
 
何のために通院するのか 
究極的には,肝がん(肝細胞がん)になるのを防ぐ,又は早期に発見することが目的だと思われます。
というのも,肝がんは大抵その発生原因が明らかであると言われており,その90%はC型肝炎ウイルスかB型肝炎ウイルスの持続感染が原因であると言われています(参考文献1)。

また,B型肝硬変からは年率1.2~8.1%で,慢性肝炎からは0.5~0.8%で,HBe抗原陰性の非活動性キャリアからは0.1~0.4%で肝がんが発生すると言われています(参考文献2)。

これをどうみるかは人それぞれかもしれませんが,間違いないのは,B型肝炎ウイルスキャリアの方は,それだけで肝がんになるリスクが高い集団に属しているという事なのです。 
(後編に続きます)

 
参考文献
1)沖田極・幕内雅敏編.2009.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝がん」医薬ジャーナル社.
2)熊田博光編.2012.「インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肝炎ウイルス―B型・C型」医薬ジャーナル社.
3)日本肝臓学会編.2013.「肝癌診療ガイドライン 2013年版」<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp>(2016/4/5アクセス)
4)日本肝臓学会編.2015.「B型肝炎治療ガイドライン(第2.1版)」
<http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b>(2016/4/5アクセス)

柏木弁護士が海外留学

月曜日, 3月 3rd, 2014
柏木弁護士は,2月末まで当事務所で執務していましたが,
今月から海外留学いたします。

柏木弁護士が主任として担当していました
B型肝炎給付金については,藤澤弁護士が今後,主任として
中心となって担当いたします。

藤澤弁護士は,柏木弁護士とともにB型肝炎給付金の相談会や電話相談を
多数担当しており,柏木弁護士が海外にいった現在,
B型肝炎給付金請求については,県内ではおそらくナンバーワンといえる
知識とノウハウを持っています。

柏木弁護士の今後の活躍に期待したいと思います。

B型肝炎ウイルスキャリアの方の感染時期は,原則的には6歳頃までの乳幼児期です

金曜日, 6月 7th, 2013
B型肝炎訴訟に関する相談をしていると,相談者の方から,病気の症状そのもの以外で苦しんでいる,とのお話しを聞くことがよくあります。

たとえば,

入院の際に,自分だけ使い捨ての食器を使わされみじめな思いをした

子どもが嫁いだ先で感染者と分かって,実家同士が険悪になった

肝炎を気にして結婚もせず,周囲の目を気にして十分な治療も受けず,がんで亡くなった

など。このような話を聞くたびにやるせない気持ちになります。

かつてはB型肝炎ウイルス(HBV)の感染ルートや感染力にいろいろ不明なところが有り,また核酸アナログ製剤のように効果的な治療法がなかったことが,いまだにこの病気に誤解や偏見が存在する原因になっているようです。

そしてこの病気,感染時期に関しては,相談者の方も多くが誤解されているようです。

ご相談者の中には,自分は配偶者以外とは性行為などしていないのにどうして……とおっしゃる方や,そうでなくとも何か漠然とした責任・引け目を感じている方も多くいらっしゃいます。

しかし最高裁で認められたように,HBVに持続感染する(つまりHBVが肝臓にとどまったまま感染状態が持続し,場合によっては肝炎,慢性B型肝炎を発症するキャリアとなる)のは,原則的には(*)乳幼児期に感染した場合に限られます(下記最高裁判決を参照)。

*近年まれに,成人後の感染でも持続感染する例が確認されていますが,平成7年以前には国内の感染例はないとのことです。

このように,HBVキャリアの方が血液感染した時期は,原則的には6歳頃までの乳幼児期です。

これをキャリアの方自身の責任による感染や,性行為による感染などと考える必要はありません。

ですので,B型肝炎のことはなんとなく人には言えない,弁護士に相談するのも気が引ける……という方も,勇気をもって私たちにご連絡下さい。

もちろん,相談の結果がどうなるかはわかりません。いろいろなハードルがあります。

しかし,少なくとも私たちは相談をしていて,相談者の方に感染の責任があるなどと考えたことはありません。

またマイタウン法律事務所では,裁判をする際にも周囲に原告の名前が知られないような特別な手続をとっていますので,知らない人に名前が知られるということはありません。

(ただし,親族の方には訴訟の相談をしなければならない可能性はあります。)

(また弁護士によっては,病院には行きたくないから行っていない,という人には怒るかもしれません。定期的な検査をして,肝炎を発症したら専門医に相談しましょう。これは訴訟より大事なことです!)

 
最高裁判所第2小法廷平成18年6月16日判決

理由・第1・1(2)エ

「 免疫不全等に陥っていない成人が初めてB型肝炎ウイルスに感染した場合で,B型肝炎ウイルスの侵入が軽微な場合には,身体に変調を来さない不顕性のまま抗体(HBs抗体)が形成されて免疫が成立し,以後再び感染することはなくなるが,B型肝炎ウイルスの侵入が強度な場合には,黄だん等の症状を伴う顕性の急性肝炎又は劇症肝炎となる。顕性の肝炎が治癒した場合には,上記抗体が形成されて免疫が成立し,以後再び感染することはなくなる。なお,成人がB型肝炎ウイルスに感染してから顕性の肝炎を発症するまでの期間は1~6か月である。

乳幼児は,生体の防御機能が未完成であるため,B型肝炎ウイルスに感染してウイルスが肝細胞に侵入しても免疫機能が働かないため,ウイルスが肝臓にとどまったまま感染状態が持続することがあり,持続感染者となる。持続感染者となった場合でも,その後の経過の中でセロコンバージョンが起きれば,以後,肝炎を発症することはほとんどなくなる。しかし,セロコンバージョンが起きないまま成人期(20~30代)に入ると,B型肝炎ウイルスと免疫機能との共存状態が崩れて肝炎を発症することがあり,肝炎が持続すると慢性B型肝炎となり,肝細胞の破壊と再生が長期間継続され,肝硬変又は肝がんへと進行することがある。そして,持続感染者に最もなりやすいのは2,3歳ころまで(最年長で6歳ころまで)で,それ以後は,感染しても一過性の経過をたどることが多い。

 
 

カードがいつの間にか自動リボ払いに!?

金曜日, 2月 17th, 2012
ETC用にJCBカードを使っているのですが,
なんとそれが自動リボ払いになっていて,
いつの間にか10万円も借り入れをしていることに気付きました。

今まで毎月送られてくる明細書は,なんとなく見て,すぐ捨てていました。
最近送られてきた明細も支払額6,000円程度なので,
最初は何とも思いませんでした。

しかし,ETCの利用履歴を見たところ,何かおかしい。
この月は,もっとETCを使っている気がしたのです。

そこで初めて裏面の支払残高情報を見て,
10万円の借り入れがあること,
今回の支払6000円のうち5000円が定額の支払で,
1000円が手数料(金利)だということに気付きました。
こんなことではいつまでも手数料を支払い続けなければならないではないですか!

ということは,カード申し込み時に,いつの間にか自分でリボを選択したのでしょうか。
でも,月々金利を払っていたなんて,恥ずかしながら全く認識していませんでした。

こんな間抜けな話は自分だけかと思ったら,
なんと勝間和代さんも「ショック。」だったらしいですし,
国民生活センターも注意を呼びかけていました。

楽天KCカードが
なんと最初から「自動リボ払い設定」になっていました。ショック。(facebook勝間和代


利用の前によく確認を!クレジットカードのリボルビング払い(国民生活センター)

みなさんも,無意識に自動リボ払いを利用し,
リボ手数料を支払っていた,なんてことのないよう,ご注意下さい。

 

最高裁がピンク・レディーのパブリシティ権について判断

木曜日, 2月 2nd, 2012
ピンク・レディー敗訴確定
「著名人は無断使用も受忍すべき場合ある」

「女性自身」のダイエット記事に写真を使われた
(元?)ピンク・レディーが発行元を訴えた裁判で,
最高裁が本日上告を棄却し,ピンク・レディーの敗訴が確定したそうです。

よくある裁判かと思ったので見過ごしそうになったのですが,
判決を読んだら,
パブリシティ権(著名人の名声,肖像などを保護する権利)とは何か,
どのように利用した場合に違法になるかが判断されています。

そうすると,パブリシティ権が初めて認められた,
記念すべき最高裁判例ということになるのかもしれません。

ちなみに,最高裁の判断枠組みで違法になるのは,
人を引き付ける力のある者の顔や名前を,
商品広告に使用するなどした場合に限られるので,
違法行為になる場合はやや限られそうです。
表現の自由に配慮した結果なのでしょう。
パブリシティ権に興味を持たれた方は,
いろいろ調べてみると
「おニャン子クラブ事件」
「加勢大周事件」
「ブブカスペシャル7事件」
など,気になる事件名がたくさん見つかって面白いと思います。

なお,このニュースが過去には
振付の著作権の問題として報道されたこともあるようなのですが
(ラッキイ池田氏もこの件にコメントしているようです),
実際の裁判では振付の著作権は争点になっていない筈です。
振付に著作権があることは法律に規定されていますし,
ピンク・レディーにも権利が無いわけではないのでしょうが,
本題から外れるので今日の所はここまでにします。