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山が動く?

金曜日, 11月 7th, 2014
離婚の際に子供の親権者を決める大きなルールに
①母親優先の原則 と
②継続性の原則
というものがありました。

②は夫婦が別居している状況で、実際に子供をみている方がその後も子供をみるべきというルールです。

で、実際に①②を利用すると、母親が子供を連れて別居した場合は、父親は親権や監護権をとるのは ほぼ絶望的ということになります。

①は、男女の役割分担を前提にした社会構造や価値観の中であればともかく、
男女の役割分担意識は因習だなどと言いながら、 母親優先等と言われるとご都合主義的な感じがします。

②は、子供の奪い合いで、先に連れて行った者勝ちにします、と裁判所が宣言しているようなものですから 法治主義の放棄のようなものです。

でも、ようやく変わってきたようです。

法曹時報という裁判官向けの雑誌があります。
最近は、離婚関係の記事(主に離婚に詳しい裁判官が、離婚事件審理上の考え方の基本について書いている) が続いていたのですが、先日は「子の監護者指定・引渡調停・審判事件の審理」という記事がありました。

そこで、母親優先の原則も、継続性の原則も「従来の考え方」として記載され、最近の考えでは、
より実質的に監護権者がどちらが優れているかを考えている傾向にあるとしています。

これは、男側の離婚事件に多く関わってきた弁護士からすると、おどろくべき大きな変化です。
おそらくは、特に②の関係ではハーグ条約の影響があるのだと思います。
②は明らかにハーグ条約の趣旨と矛盾しますから、国内案件だけ、継続性の原則というのは無理だということです。

もちろん、急に父親が親権や監護権をとることができるようになるか、というと当面は何らかわらないと思います。
単に、母親を親権者や監護権者に決める理由として、母親優先や継続性ということを言う代わりに、諸事情を考慮の上 母親が相当と結論づけるだけと思われます。
でも、5年単位で言うと、つまり2原則の影響が十分消えて、実質的に考えるということが定着した上で 裁判官が考え出すと、父親が親権や監護権を取得できる事案も増えていくのではないかと思います。