4月 18th, 2017
前回に引き続き,よりアクティブな事務所と比べた当事務所の運営上の特徴です。
当事務所では,いわゆる会議というものがほとんどありません。
もちろん「会議ではなく朝礼である」というような準会議もありません。
私が参加しない簡単な会議は年に数回あるかもしれませんが,私を含んだ会議はこの1年1回だけ,昨秋に試験的にやっただけです。
つまり無権力ですがワンマンで独裁体制ともいえます。専制君主は議会を招集する気がないのです。
事務所が6箇所に散らばっていて集まるのが面倒というのもありますが,今はPCさえあればテレビ会議ができ,テレビ会議はさしたる手間もなくできます(そのためのカメラも数年前に購入した配布したこともあります)。なので,会議の必要を感じれば,会議を開くことはできると思いますが,今のところ必要も感じず,要望もありません。
会議を開く理由について考えてみると,1つはやはり方針の徹底です。
私の考えていることは事務所内の掲示板に書きます。皆,読んでくれているはずですが,たまにアレッということもあります。
そうすると会議でも開いて,情報伝達を徹底したくなる誘惑に駆られます。
会議というよりは,面と向かって方針を教育する集会ということです。より効果的にするために,方針に沿った意見を言ってもらうといったことで,情報伝達に対する不備を補いところです。
ただ,面と向かって言っても,そもそも関心がなければ聞かないでしょうし,聞いていても,それが行動にまでなるには会議以外にも様々な過程が必要そうです。そんなことで,方針伝達会議を実施したい誘惑もありますが,集合をかける程の気力が沸かないということかもしれません。
次に諸事項の決定です。
でも新しいアイデアは思いついたら,気分が乗っているうちに即実行がよいと思いますので会議の決済なんて面倒です。
あとは,諸々どうでもよい決定事項です。こういうのは沢山あります。A案とB案のどちらかを選ばなければならない,正直,どっちも一長一短です。こんなものはクジで決めても,じっくり議論しても,先のことはわからない以上,同じことです。こんなものは適当に私が決めてしまって,私が決めたということだけ明示しておけば十分な気がしています。ただ,この手のことも決定のストレスはそれなりにありますので,皆で決めたという形にしたくもなります。
あとは根回し的なところです。やはり重要な事項については,事務所内の意見を聞かずに決めるわけには行きません。
でも意見のない人まで会議に集めるのも無駄な気がします。ということで,所内掲示板で叩き台となる案を出して,意見を募集し,意見がなければ実行,意見があったら修正,撤回ということをしています。もちろん,本当は貴重な意見を持っているけど,掲示板には書いてくれない人もいるかもと思いますが。
さらに,もう少し気持ちを入れる必要がある事項は,関係ありそうな人に個別聴取して決めるということもあります。指名は私のカンなので,皆を会議に集めた上で募集したら隠れた逸材が参加してくれるかもしれません。
強いて会議的なものがあるとすると,私と誰かが話していて,たまたま近くにいたもう一人の意見も聞きたくなって「ちょっといい?」と呼んで3人くらいで話している状況がそうかもしれません。
まあ,そんなところで,迷いつつも会議が開かれていません。
そこそこの規模の事務所で働きたいと思っている人にとって,事務所会議は(好きな人は別として)それなりに面倒な出来事なのではないかと思います。
そのような想定のもと,当事務所は,会議に煩わされずに,本来の弁護士業務に専念できる事務所という側面はあるのではないかと思っています。
また,当事務所の弁護士に電話を頂いた際に,「ただいま打合せ中です」という回答をすることもあります。これも,所内会議ではなく,他の依頼者等との打合せ中ということです。
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4月 14th, 2017
昔の話が続き,老化の影に警戒感がつのります。
内容を切り替えます。
ここ半年ほど,当事務所よりはるかに大規模だったり,急成長していたりする弁護士事務所や税理士事務所の代表の話を聞く機会が続いています。
そういう機会があると,当事務所における運営スタイルを客観視することができ,特徴が浮き彫りにされてきます。
そのひとつが,代表である私の権力のなさです。
これは,当事務所の皆が私の言うことを聞かずに好き勝手にしていて,どうにもならない,という話ではなくて,事務所の仕組みやマネジメントスタイルとして,そういうことになっているということです。
色々話を聞く中で人事評価権限が権力の源泉となる(当たり前のことというニュアンスのもと)という話を聞いて,なるほど実感しました。当事務所では,私が何らかの評価をして待遇に反映するという仕組みが弁護士であれ,事務スタッフであれ当事務所には存在しません。
あまり考えていませんでしたが,これは他の事務所とは大きく異なるあり方のようです。
それぞれ容易に予想される一長一短はあり,おそらく当事務所のスタイルでは急成長は難しいかもとも思います。が,まあどちらがよいかというのは人知の及ばないところでしょう。いずれにしろ,当事務所が今のスタイルなのは,私が精神的に虚弱であり評価権限というプレッシャーがきついことや,出来事の評価を人間がなしるうことに懐疑的だという私の性格や考え方に依存するところもあると思います。もちろん,現在のあり方が最善と思っているわけでもないので,仮に評価制度を導入するとしたらどういうものにするかということは,常に考えてもいます。
評価しないのは逃げているだけかなと思うこともありますが,アドビ等の先進的な企業で業績評価を廃止しているトレンドがあるという話もあり(それが当事務所のようなものなのかはわかりませんが),必ずしも不合理ではないようです。
少なくとも,内部的なコミュニケーションについて真意からなのか評価目的なのかということを考えずに済むことや,中傷を聞かずに済むことは,マネジメント業務に専念する上では大きなメリットを感じることができています。
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4月 13th, 2017
少し前のことですが,雪山訓練をしていた高校生が雪崩の犠牲になりました。
犠牲になった方は気の毒ですが,こういう行事がなくならないことを祈って,昔のことを書きます。
実は,私も高校2年から高校3年にあがる春休みに,県が主催していると思われる春山講習会(つまり雪山での行動訓練。場所は八ヶ岳)に参加しました。
山岳部というのは特殊で,基本的に他校との交流はありません。
そういう中で,唯一,他校の生徒も参加する行事がこの春山講習会でした。
他校が参加するからといって交流を深めたりするわけではないのですが,やはり他校の連中が我々に比べてどうなのか,というのは気になるところなので,強い興味がわく行事です。
さらに,雪山では,アイゼンやピッケル,その他ヤッケとかオーバミトン,スパッツ等の衣類といった特殊道具を使えます。
こういうものを使ってみたいという興味はありますが,自分の学校単独で雪山に行くということはないので,特殊道具を使ってみることができる貴重な機会が春山講習会でした。
実際,何をしたか詳細な記憶はないのですが,横岳(南八ヶ岳のほうの横岳)の山頂で穴を掘って風を防いだこと(これは教わったのではなく,勝手にやってみた),下り坂でグリセードといって靴をスキーのようにすべらせて滑り降りたこと,滑落停止訓練というのをうまくできないと,どこぞの熱心な先生に「死んだー」と叫ばれていた(つまりそのようなやり方では現実の環境では滑落を止めることはできないことの強い表現)こと等はいまも覚えています。
ところが,この手の行事に参加するというのは顧問の先生方にとっては面倒で負担です。
我々の期は,人望ある部長がいたおかげで,顧問が面倒な行事にも色々つきあってくれたのですが,上の代のとき(つまり私が高校1年から2年にあがる春休み)は春山講習会には参加できませんでした。
その代わりに上級生により決行されたのが丹沢登山です。丹沢は我々にとってホームグラウンドのようなところで,大したことはないはずでした。雪山道具を少しでも使えたらという希望もあったようで,特殊用具ももって行きました。この登山は,よく事情は覚えていませんが,顧問はおらず生徒のみで行われました。
ところが,2日目の朝,目が覚めたら,一面銀世界の雪山が待っていました。上の代はともかく,我々は特殊道具の使い方等知りません。
何度となく,滑落(つまり雪のなかで制御不能になって相当距離滑ってしまうこと)がありましたが,上級生の山行継続の意思は強く2日目の幕営(檜洞丸の山頂)が行われます。
翌朝,さらに状況が悪化します。夜間にさらに雪が降り続き,翌朝には十分な雪がまんべんなく積もって道が全くわからなくなります。勝手知ったる東丹沢であれば,カンで進めたかもしれませんが,あまり来たことがない西丹沢ではどうにもなりません。
どうにもならないまま停滞(行動できずにテントで様子見)します。我々のテント(我々の代3名が止まるテントで上級生はいない)は入り口のチャックが壊れていて,風や雪がそれなりに入ってきます。しかも,誰かが気を聞かせて(つまり,どうせすぐ帰ってくるだろうという見通しのもと),本来の指示された量よりも大幅に少ない灯油しか持ってきていませんでした。その結果,寒さを凌ぐために,夜間照明用のろうそくの火をで暖をとりながらシャウトを繰り返す状況でした。
そんな中,別のパーティがあらわれ,下山道に踏み跡をつけていってくれます。雪は降り続いていますので,すぐに行動しないと踏み跡は消えてしまいます。ようやく上級生の英断がなされ,踏み跡と辿って下山がはじまります。途中,踏み跡が消えかけて間違えた方に降りてしまって登り直したり等ありましたが,全員無事で戻ってくることができました。
今となってはよい思い出ですが,遭難すれすれだった気がします。
この出来事のきっかけは,上級生が春山講習会に参加できなかった悔しさだったと思っています。
そんなわけで,やはり春山講習会のような行事は継続したほうが,よいのではないかという気がしています。
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3月 30th, 2017
インターネット社会になって怪情報を信じる人が増えたような話もあります。
でも,情報が乏しい近代以前の時代に人々の心に魑魅魍魎が跋扈していたことは言うまでもありません。
本の時代だって,怪情報はあります。
私は高校1年生のころ,木星人が地球に攻めてくるという本を読みました。おそらく著者は五島勉氏だったのではないかと思います。
その本は,様々な歴史的事実や科学的事実らしきものを根拠に木星人が存在していて,地球に攻めてくるだけの十分な根拠を示していました。
何か変な気もしますが,これだけ根拠があるし,本にもなっているのに嘘ということもあるまい,という気になりました。
今であれば色々インターネットで調べて,その信用性は把握できたと思います。
新聞とテレビとラジオを近所の本屋くらいしか情報源がない時代では,木星人の真偽についてはなかなか把握しにくいものです。
とはいえ,そのような経験を踏んでいたので,本に書いてあることを含めて,あまり物事を鵜呑みにしない習慣はつきました。
おかしな経験というものは,それなりに身になるものです。
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2月 18th, 2017
先日,はじめてサーキットを走行してきました。
昨年,極めて原始的なスポーツカーを入手した縁で誘われた次第です。
もともと臆病な上,そもそもスポーツ的な競争心が欠落しているので,レースをしよう等という考えはさらさらありません。
たいてい競技とかスポーツとかは,一定レベル以上は,恐怖なり苦痛なり緊張なりに耐えながら,決められた行動をいかに正確にこなすかという単純行動に帰結する気がします。そのようなことに夢中になるためには,健全なる競争心が必要なわけです。
私の意図は,一切の電子制御のない車を運転するに際して,限界を超えるとどういうことになるのか,公道よりも安全な場所で体験しておくのも一興,ということでした。しかし物事は計画通りにいかないもので,結局のところ臆病さがまさって,十二分に早く減速してしまい,限界を超えるどころか限界近くにもおそらく達することがない状況でその日が終わってしまいました。
現地にたどり着くのに片道2時間かかり,その距離に辟易しました。ところが,ずいぶん遠方から,しかもトラックに車を積んで来ている人が大勢いるようでした。スキーに比べても,はるかに多大なエネルギーを要する趣味のようです。
それでもなかなかおもしろい経験ができたと思います。
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1月 31st, 2017
法曹時報という法曹向け(法曹向けの本の中でも最も固めで,一般法曹向けというより勉強熱心な一部の法曹向け)の雑誌があります。
最近68巻11号で,認知症高齢者の電車事故について,家族の賠償責任を否定した最高裁判所の判決についての論考が記載されていました。
上記最高裁に違和感を感じる法曹の根っこには,「被害者は必ず救済されるべし」「被害があるからには誰かが責任を負うべきである」という正義感がある。
筆者が学んだアメリカではこういう発想はなく,原則として被害は被害者が負担するもので例外的にのみ加害者に請求できるという公平感がある。
今後,高齢化社会が進展するにあたって,日本の法曹の正義感は不合理なことになるので,修正するのが相当
といったような内容です。
私自身も,この種の正義感には違和感を感じていたのですが,アメリカから輸入された正義感だとばかり思っていたので,びっくりでした。
嫌なことがあれば,それが事故であれ,病気であれ,不愉快であれ,誰か悪いヤツを探し出して賠償させるというようなことに日本の不法行為法は使われています。そして,賠償範囲の拡大はとどまるところを知りません。
法律が適当で,悪いことをしたやつに賠償させることができる,という程度のことしか書いていないので,悪いことがどんどんひろがっていってしまって,最高裁が必死にとどめているというのが現状です。
弁護士としては,勝てる可能性がある以上,依頼者が求めてきたら賠償請求せざるを得ない(もちろん,当事務所もそうします)ので,この状況を変えるには,適当すぎる法律の条文をも少し具体的なものに変えるしか無いのではないかと思います。
まあ,不愉快な気持ちが生じたら,その原因を探し出し(原因が見つかるまでは落ち着かない。間違ったものにしろ原因を決めれば落ち着く),攻撃可能であれば攻撃を開始するというのは,脳の本能というようなものです。日本の正義感は本能に即したものといえるでしょう。それに油をそそぐか,冷静な判断をするような枠組みをつくるか,そういう問題なのだと思います。
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1月 29th, 2017
アメリカでトランプ大統領が就任したとたんに、公約の実行を推し進めています。
トランプ大統領に否定的だった人は、公約は選挙向けのものであり、大統領に就任した場合は「常識的」な政策をとると期待していたのかもしれませんが、まったくの期待外れのようです。
公約違反とか、違反しなくても政策の実現には時間がかかるのが当たり前の感覚だった中で、このトランプ大統領の行動はすごいと言わざるを得ません。
これが、職業政治家ではなく、ビジネスマンであるということかもしれません。あれこれ考えたところで、正しい方法等わかるはずもない。とりあえず実行してみて、間違っていたら修正すればよい。ということなのでしょうか。政策の中で、当然うまくいかないこともあると思いますが、その場合にどう対応するのか、仮に君子豹変ができるとすれば、名大統領の目がでてきます。
正直、トランプ大統領の政策はおっかなさがあり、肯定的なことを書いてあとで後悔するのではないかという気持ちも常にあります。ただ、政策のようなものの是非は、根本的には人間には判断のしようなどなく、それがわかっていながら、脳の活動のサガとして、まったく意味がないのに色々と理屈をつけて考えてしまうようなものだと思います。
もっと単純な問題で、株の売買を考えても、得をしたか損をしたかなんて根本的にわかりようがありません。
ある株を買って、売るときに値上がりしていたら得、値下がりをしていたら損というのが第一の結論です。
でも、得をしたと思っても、翌日にさらに値上がりしていたら、昨日売るより今日売るほうが得だったということになります。
判断基準が、買った時を基準にするか、売った時を基準にするかという問題です。
買ったときの基準にしても、得をするならもっと多く買っておくということもできたのですから、その程度しか買わなかった判断により損をしたといえます。
また、買った株よりももっと値上がりした株があったのであれば、そちらを買ったほうがよかったことにもなります。
結局のところ、第一の結論は、ある一定の時点で一定の金額を普通預金にいれておくか特定の株を買うかの二者択一の選択肢しかなく、かつ特定の日にその株を全額売るという極端に限定された仮定を置いた場合の損得判断なのであって、無数の選択肢がある現実の状況ではほとんど意味がない判断だといえます。
仮に、あるときに全財産を原資に買った株がその後ほかの株に比べて圧倒的に値上がりし、それをすべて売却した日を境に暴落したとしたら、得をしたと言わざるを得ないでしょうか?その場合だって、借金をしてもっと買えばもっと儲かったわけです。その他さらに、極端に考えていけば、どうみても得という場合はあるかもしれませんが、非現実的な話になるでしょう。
何人の運用の巧拙を判断する場合も同様で、一定の日に同時に運用を始めて、一定の日の残高で勝負を決めるというようなゲーム的なルールであれば、そのゲームでの勝敗判断はできると思います。が、能力の差を統計的に優位な程度に判断するには、かなりの回数のゲームが必要でしょうし、本当に統計学的前提が適用できるのかどうかすら怪しいものです。
というところで、少なくとも一定時点間、限定条件下での損得が比較的わかりやすい株の売買ですら、その損得、巧拙が人間にはわかりようがないことは明らかです。ましてや、さらに複雑で、同時に比較することもできず、評価にあたって何の指標を用いるべきかを判断することもできず、偶然的な外部的要因の影響も大きいような政治家が行う政策について、人間が、事前にはもちろん事後的にすら判断できようもないことは明らかです。
たとえばメキシコとの国境に壁を作る政策と作らない政策。壁を作った場合は、作らなかった場合は想像するしかない。経済成長率なのか失業率なのかいったい何の指標で成否を判断するのか。まあ、わかりようもない気もします。
ということで、過激な政策はおっかないですが、どうせわからないということで、しばらくはトランプ劇場をみていくことになるでしょう。
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1月 21st, 2017
いまさらのようですが,大河ドラマの真田丸が終わり,別の大河ドラマが既に始まっています。
9月頃に,どうにも主人公がダメだと書いた後あたりから,主人公の幸村にも多少覇気がでてきて,マシになりました。
とはいえ,振り返ると全体的に面白かった中で,主人公の存在感の弱さがもっとも気になった点でした。
以前の真田太平記でも幸村がいまいちだったので,ちょっと考えてみました。
そもそも,真田幸村はなぜ有名なのか,というと実は現代日本人には理解しがたい宗教的な意義があると思います。
朱子学の発想でいえば,ダメな主君に最後まで忠義を尽くす有能な家臣というのが,忠 の見本です。
そして,その価値を体現した一人が幸村であり,宗教的表現をすれば,殉教者だったり,聖人だったりする,そういう人なのだろうと思います。
楠木正成や大石内蔵助なんていうのも,同じような方でしょう。
つまり,キリスト教圏で,セントだ,サンタだ,サンクトだという後に名前がつくような,宗教的な感動を呼び起こす殉教者という側面が真田幸村にはあったのではないかと思います。
もっとも,現代人にはそのあたりは全く理解不能。ほとんど共感を持ちえない。その結果,物語は現代風の自己実現的なものになってしまう。
ところが,自己実現の話としては,やはり幸村の行動はとらえきれないものがある。おのずと存在は曖昧になり,現代人にも理解しやすい真田昌幸が魅力的になる。
そんなところでしょうか。
ところで,10月頃から,トルストイの戦争と平和を読んでいます。
この小説での戦争とは,ナポレオンがロシアを攻めたときの戦争です。
で,ちょうど真田丸で大坂方の幹部のダメっぷりが描かれて,それが敗因のような描かれ方をしている中で,戦争と平和では,ロシア側の無策もろもろの大坂方と重なるようなダメっぷりが,結果としてフランスがモスクワまで進むことにつながり,最終的なナポレオン軍の壊滅をもたらしたかのように主張されていました(この小説は小説中に著者の主張がちりばめられている)。ちょうど,タイミングが重なり,面白かったです。
もっとも,ダメだからこそ勝ったというのは事実としてはそういうこともあるだろうし,逆説としては面白い。でも,人間の認識構造は勝ったという結果をもとに何故勝ったのか考え,わかりやすい原因と結果の連鎖をみつけて学習するということだろうから,本当に「ダメだから勝った」ということを受け入れることはできないようにも思えます。
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12月 19th, 2016
この1年程で,キンドルで読んだ本を振り返ると,社会系から理科系に移って仕事実用系を経て社会系に戻ったというところでしょうか。
アマゾンの推薦機能があるせいか,同じ分野の本をまとめて読むことが多かった気がします。
この一年の反省点としては,古典を読まなかったということで,今,ながーい古典を読んでいます。
第一次世界大戦
第一次世界大戦はよく分かってなかったので,読んでみたくなりました。多少はイメージがつかめたかも
HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
日英同盟 同盟の選択と国家の盛衰
第一次大戦時のイギリスからの応援要請の際の日本の態度やそれに対するイギリス世論の評価や,同盟が終わったのが合衆国の意向だったこと等,今の日米関係を考える上で,面白かったです。
第五の権力
日本の論点2015~16
アメリカの鏡・日本
これはとても面白かったです。GHQの一員として来日したアメリカ人が書いたものです。日本は鬼畜米英と言っていましたが,アメリカは日本人について古代から世界征服を企んでいた凶悪な民族であるということにしていたようです。そして,GHQの占領政策は,二度と日本が立ち直れないようにするためのものと著者は感じています。日本が永久に立ち直れなくなるが,これでよいのかと疑問を呈しています。その後,諸事情があり日本は急激な復活を遂げますが,それを知らない当時の視点だけに興味深いです。
沖縄の不都合な真実
リー・クアンユー、世界を語る
中国は民主化すべきではない,という結論に説得力がありました。自分の国のやり口が正しくて,それと違うやり方をする国を軽蔑するという偏見から逃れるのは難しいものだと感じました。
パール判事の日本無罪論
面白かったです。インド人の変な人が加わっていただけかと思っていたら,当時から著名な人だったようです。戦争批判の中で「産めよ増やせよ」的な話を聞かされていたせいで,日本が海外進出を試みざるをえなかった原因は人口過剰問題というのはびっくりでした。
天才
石原慎太郎の本は読んだことがなく,田中角栄について書いた本も読んだことがなかったので一石二鳥を狙って買ってみました。
ドイツリスク~「夢見る政治」が引き起こす混乱~
どの国も色々とあり大変です。日本に問題があると,どこかにはだいぶマシな国があるかのような幻想を抱いてしましますが,そうはいかないようです。
イザベラ・バードの日本紀行
この本はこの一年で一番かもというくらいよかったです。目の見えないあん摩は金貸しを兼業していて金持ちだったこと,日本人はあからさまに宗教を軽蔑しているが,お守りは大量につけているとか,アイヌ人が義経を崇拝しているとか,その当時の視点で書かれた本は面白いです。
ウイルスは生きている
ここから生物学系の本を読んでます。そもそも,人間からくしゃみとかで排出される無数のウイルスはどうなるんだ,死ぬのか,ずっとそのままなのか,微生物が食べるのか,といったあたりがよくわからなかったので,ウイルス系を中心に読んでいったのですが,結局よくわかりませんでした。大量に読もうと意気込んでいましたが,キンドルだけでは出ている本に限界があり,紙の本も買いましたが,それはそれでかさばるので,途中で停止です。
宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議
読んだ生物学系の本の中ではもっとも面白かったです。地球上に酸素がある分だけ化石燃料がある,化石燃料にならずに分解されてしまえば植物が作った酸素は二酸化炭素に戻ってしまうから,というのは言われてみれば当たり前ですが,全く考えていませんでした。
時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子
巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト
たんぱく質入門 どう作られ、どうはたらくのか
新解説世界憲法集
こういうものは読んでみるものだと思いました。日本で憲法論として教えられて漠然と憲法とはこういうものと思っていたこと,少なくとも西側先進国は戦争放棄以外は概ね日本国憲法と同様のことが規定されているのだろうと思っていましたが,勘違いであることを思い知らされませいた。
超一流になるのは才能か努力か?
これは面白かったです。ただ,下に記載の『やり抜く力』も含めて,一流になるには努力が重要とするのだけれど,努力をしても一定レベルのところに超えられない素質差があることについて,説明が不誠実な印象です。運動能力についての男女差等のような素質差が,同性間にもあるだろうことは容易に予測されるのだから,努力で差がでた場合のみを強調しても説得力は弱いと思います。
時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人 SMARTCUTS
やり抜く力
サピエンス全史(上)(下) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福
それなりに面白かったです。が,暴力の人類史とか,銃・病原菌・鉄なんかに比べると軽い印象です。その分,読むのはラクでしたが,読後の達成感はそれほどではない気がしました。
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11月 29th, 2016
B型肝炎ウイルスに関する情報です。
調べ物をしていて初めて知ったのですが,HBV(B型肝炎ウイルス)キャリアの方は,そうでない方に比べ,悪性リンパ腫を発症する可能性が高くなるかもしれないようです。
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
「多目的コホート研究(JPHC Study) B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス感染者の悪性リンパ腫リスク」
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3541.html
なお,両者の相関のメカニズムが解明されたわけではありません。
またこの研究の対象者は,1993年に40~69歳だった約2万人のようです。
悪性リンパ腫の発生率が一般に10万人に約10人程と言われていることからすると(註1),悪性リンパ腫のサンプル数はたった数名なのではないかという気がします。
また,HBVキャリアの出現率が1993年に0.41%ほどであったことからすると(註2),HBVキャリアのサンプル数も100人に満たないくらいではないかという気がします。
統計的にこの数字をどう見るべきかわかりませんが,直感的には,決して多くないサンプル数のような気がします。
ですので,まだ言えることは多くは無いようですが,HBVキャリアの方は,慢性肝炎や肝がん等のほか,悪性リンパ腫という病気についても,理解を深めておいた方が安全なのかもしれない,ということは言えそうです。
(私個人はまだ不勉強で,どのような検査・心がけで悪性リンパ腫の早期発見が可能なのかわかっておりませんが…)
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註1:Wikipedia「悪性リンパ腫」平成28年11月29日閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E6%80%A7%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%91%E8%85%AB
註2:国立感染症研究所 感染症情報センター「献血者におけるHBV陽性率の動向とB型肝炎感染初期例のHBV遺伝子型頻度」平成28年11月29日閲覧
http://idsc.nih.go.jp/iasr/27/319/dj3193.html
B型肝炎給付金に詳しいのはマイタウン法律事務所
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