石井一久~「好きこそ」でないから、未完の大器~

西武の石井一久投手が、史上最速で20人目の2000奪三振を達成しました。
先日、ヤクルトのエースは誰かということを書きましたが、その前のエースは間違いなく石井一久です。

石井一久は、この2000奪三振もそうですが、実績十分なベテラン一流選手ですが、未だに未完の大器の趣があります。
普通、未完の大器とは、実績のない若い選手に使う言葉で、そのうち消えていくか、一流になっていきます。
ですから、すでに一流になった石井に未完は、変なのですが、
本当は、超一流、もっと言えば、日本史上最高の投手になれないまま、ここまで来てしまった感があります。

今回の、2000奪三振も今までの最速記録は、日本史上最高との声が多い江夏です。
また、江夏も野茂も達成できなかった、シーズン奪三振率11超えを達成したのも石井だけです。
他の一流・超一流選手がどこかで、三振へのこだわりを捨てて、勝ちにこだわりを持って
実績を重ねるのに対し、石井は三振へのこだわりを捨てずに、ここまで来たのかもしれません。

メジャーでも、石井は前半戦は気が向くのか、調子がよく、シーズン終盤になって失速を繰り返しました。
その結果、2002年から2004年の3年間の前半戦だけの勝利数29はメジャー最高となります。
つまり、この3年間の前半戦ではメジャーナンバーワンとも言える活躍をしています。

こういうエピソード的な部分では、石井の超一流の片鱗はたくさんあります。
でも、現在の実績は、一流ですが、超一流にはとどかないままです。
そして、まもなく引退するだろうという気がします。

その石井の言葉は独特ですが、基本トーンとしては、
「野球はそれほど好きでない」というものです。
つまり、「好きこそものの上手なれ」ではありません。
その中で、人並みはずれた素質を頼って、一流の成績を上げてきているようです。
もし、野球が好きになって、イチローのように励めば、きっと超一流で
メジャーでも有数の選手になったのではないか、という思いがあるせいで
未完の大器といいたくなるのかもしれません。

自分の仕事について,素質に恵まれていても,好きになれるとは限りません。
そういう人にとって「好きこそ物の上手なれ」というのはプレッシャーです。
好きになるかどうかは,努力では,何ともならないからです。
そんな中,好きでないと言いながらも,一流といえる成績を残し続ける
石井一久は,独自の光を放っていると思います。

 

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