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クレタ人のうそ

火曜日, 12月 2nd, 2014
面白い研究成果があります。
弁護士の裁判書類作成能力は、新人時がもっとも高く、その後はひたすら
能力が低下していくそうです。
『弁護士の民事訴訟におけるパフォーマンス評価:法曹の質の実証的研究』

http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/09/papers/v09part07(ota).pdf
詳細を読んでいくと、10年目くらいまではほぼ横ばい(やや低下)ですが、
その後はグラフは急な下り坂となり、15年、20年、25年、30年とグングン能力が
低下していきます。

プロとしての能力研鑽とは全く逆で、やればやるほど駄目になるということです。
常識的にはびっくりで、研究方法が変なんだじゃないか?と言いたくなりますが、私が感じてきた次の印象とは整合的です。

・司法修習時に裁判所で弁護士の作成書面を多量にみたが、「これはなかなか書けない」と思うようなハイレベルの書面をみたことはなかった。
むしろ、このレベルなら(修行も指導もなく)すぐに作れるな、という印象だった。
・弁護士登録後も、相手作成の書面について、「すごい」と思うレベルの書面には出会えなかった。
・いままで出会った典型的でない訴訟、つまり法律構成に頭を使わなければならない訴訟の大半において、相手方の主張は法理論的には荒唐無稽なものであった。
つまり、法理論と言われているものは、人間様が扱うには少々難しすぎるのではないか。
・自分自身40歳を越えてから、難しいことを考える能力がドンドン落ちてきている気がする。
・弁護士業界の、「会務」をする人を高く評価し、弁護士業務が優れている人を評価する文化・気風がない。

ともあれ、当事務所は、個人法務において圧倒的に質の高い仕事を目指していますので、
この研究については、内部的にじっくり研究して対策を練っていこうと思っています。

ところで、この研究において、パフォーマンスの評価者としては
「弁護士実務を5年以上経験した者であることを最低要件とし、その中で、原則として弁護士登録10年以上の弁護士を選び、さらにその中でも弁護士会で評価の高い熟達の弁護士を選抜した」
とのことです。でも研究成果の結論からすると、この手の人の能力は著しく低いのではないか?
そうなるとこの研究成果の妥当性は???